勝田ズ・ウェイ  1

え〜、というわけでカルト的な人気のあるサスペンス映画「カッターズ・ウェイ(日本未公開らしい:マジで観たい)」の名前だけいただいて(後でプロットを読んだんだけど偶然ながらプロットに類似性がある)「勝田ズ・ウェイ」を当ブログにてただいまより上映いたします。
なお、前置きした通り説明が長く、出たとこ勝負で書き連ねるのでいつ話が終わるかわかりません(笑 そして話はドギツイです。

また、作品中に登場する個人・団体・その他一切は100%私の想像上の産物ですので現実のものとは一切関係ございません。劇中に出てくるクルド人も実際のクルド人とは一切関係ございません。よろしくお願いいたします。そして上演中のコメント・クレームは一切お断りいたします(笑


〜〜勝田ズ・ウェイ〜〜

日本のどこかの大都市郊外に位置するベッドタウンの以東市、クリーンで、豊かで、物質的な豊かさがすべて揃っているサバービアのはずの街なのだが、そんな豊かさを享受し損ねた連中が街の東のはずれには住んでいる。
そこの揚げ物の匂いが染み付いた商店街を抜けて5分ほど歩いたところのドブ川沿いの一方通行に風呂無し安アパートばかりの区画がある。そこにかつては雀荘だった建物があり、オーナーがガサ入れで逮捕されてからは月2万5千円の賃貸物件になっている。そこに住み着いている青年がこのお話の主人公・勝田くんだ。

勝田くんは21歳で現在は土建屋に勤めている。バイクが好きで現在は76年型ハーレー・ダヴィッドソンが愛車である・・・。というか初めて買ったバイクがこれなのだ。古い年式のバイクなのでいつも何かしら整備しなければならないわけだが手先が器用で機械いじりが得意な男なので苦にならない。
そんなわけで今日も自宅で愛車の整備をしている。雀荘だった住まいは土足で入れるしバイクを室内に置けるスペースがある。玄関の敷居は管理会社に無断で無理やり取っ払った。(←良い子は真似しない)

上はタンクトップ一丁で下はディッキーズのパンツで黙々とオイルにまみれて作業してるところに玄関から景気良く「ただいまぁ!」と女の声が響く。こんなむさ苦しい場所に相応しくないかわいらしい女の子の声の主は勝田くんの彼女のエヴィンちゃんだ。

彼女は勝田くんと同い年で日本に移住してきたクルド人難民の2世。「ただいま」と言ったのは勝田くんと同居してるわけでは無く社員研修で3日間遠方に行ってたからだ。彼女の住まいは以東市の東側にある麻田市のクルド人コミュニティ。どんなところか一言で言うと長屋だ。

「ああ、お疲れさん」とそっけなく振り向いて答える勝田くんに向かって(勢いよく)後ろから抱きついて「寂しかった〜?」と満面の笑みを浮かべながら頬ずりしてくるエヴィンちゃん。「おいおいよせって汚れるって」と困った表情見せる勝田くんでありました。


さて、ここまで読んでどうかこの二人を「ただの底辺の低能DQNのバカップルそのもの」と思わないで欲しい。今後の話の展開に差し障るからだ。というわけで解説しよう。
二人は小学校以来の幼なじみである。仲良くなったきっかけはクラスの中でドクターペッパーをおいしいと思ってるのがこの二人だけだったから。皆が二人をバカにする中「でもおいしいもんね〜」と主張を曲げずに意気投合したわけだ。二人が知り合った頃勝田くんは両親を亡くし叔父叔母夫婦に引き取られていた。んで、この夫婦がかなり問題ありすぎで二人揃って酒癖が悪く叔父は厄介者の勝田くんに暴力を振るうこともしばしば。これが勝田くんが中学生になって抵抗できるくらい大きくなると暴力の矛先は叔母へ→叔母、別の男を作って蒸発→捨てられて出戻り→今度は叔父が蒸発といった具合で家庭環境が荒みきってたので勝田くんはグレてしまい。中学校の不良グループとつるんで自販機荒らしや車上荒らしなどの窃盗を繰り返すようになる。
勝田くんが荒れてる最中にエヴィンちゃんは母と死別してしまいショックで一時(学校でのイジメもあって)不登校になっていった。そんな中今度は勝田くんがパクられて別荘で休暇をとることに(鑑別所行きとも言うが)なったのでエヴィンちゃんのショックは凄まじく高校進学も危ぶまれたような状況だった。別荘から帰ってきた勝田はそんなエヴィンちゃんを見て更生することを決意。トラブルメーカーの叔父叔母夫婦とはスパッと縁を切り自活して定時制高校に通うことを決めた。
小僧が自活しながら学校に通うことは相当にハードであることは想像できると思うが更生してエヴィンちゃんが喜んでくれることを思えば、と一念発起した勝田くんの態度に感激したエヴィンちゃんは勝田くんのために毎日お弁当を作ってあげることを決めた。
そんなわけで母が死に自分の家の家事一切をこなしつつ高校に通い(頭は良かったようです)夏休みはバイトで家計を助け、さらに勝田くんの弁当を作り面倒をみるという苦労を背負い込んだエヴィンちゃんだったが持ち前の負けん気でこれをこなし、中学時代は母との死別もあって内気で人見知りが激し過ぎた性格だったのが高校を卒業する頃には明るく快活な子に激変し、ハードなスケジュールをこなすためにスケジュール帳を手放さない几帳面な性質も身につけた彼女は卒業後は就職活動も苦労することなくあっさりと駅前のショッピングモールの販売員になって現在に至る。
一方そんなエヴィンちゃんに励まされた勝田くんは紆余曲折はありつつもなんとか20歳で高校を卒業。そんな苦労人の彼の話を聞きつけた遠縁の親戚が自分の経営してる土建屋さんに彼を雇い入れ、就職もすることができてめでたしめでたし、という経緯があるのだ。

そんな苦労人のお二人さんだが、最近はエヴィンちゃんが「就職から1年経ったのでそろそろ結婚を考えて欲しい」とうったえてきて勝田くんは正直戸惑っていた。10代の頃があまりにも苦労の連続で、自分にも人並みにモラトリアム期間が欲しいというのが彼の気持ちなのだが「以前のように不良に成り下がらないように早く身を落ち着けて欲しい」と願うエヴィンちゃんの気持ちも上の経緯をご覧になった方なら誰しも理解できるだろう。

そんな幸せ過ぎるように見える現在の勝田くんだが、彼の頭にはある別の考えがよぎるのだった・・・・・・



続く