倍達の山
- 出版社/メーカー: アミューズ・ビデオ
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どういうわけだかDVDが出ていない高村薫原作、崔洋一監督の「マークスの山」
原作は未読ですが(団塊世代のおっちゃんがよく読んでたな)非常に緻密なディテールによって描かれた(らしい)原作を無理やり短い時間に押し込めたため映画のデキの方は・・・です。
この映画の中で描かれる連続殺人犯の犯行の背景となる陰惨な暴力に埋め尽くされた過去のエピソードは個人的には
梶原一騎の作品を連想せずにはいられませんでした。
- 作者: 中城健,梶原一騎
- 出版社/メーカー: 新潮社
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どうも高村というペンネームからして一騎先生の本名高森朝雄を連想させてくれるんですよね。
そして同じく高村先生の作品の映画化
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これは原作と比べたらどうかわかりませんが「マークス〜」に比べたらまあまあの出来でした。
(話の展開がわかりやすいというだけか)
ここで梶原先生と縁のあった石原プロモーションが製作に関わったもんだから妄想は肥大化する一方です。
どちらの作品も事件の犯人は厳しい現実に打ちひしがれた悲しい過去を持ち、社会とのつながりを何らかの理由で断絶してしまった者たちです。
(その犯人たちの心象風景を表現する形で吹雪の雪山が描かれます)
「LJ」の最後の方で渡哲也が放つセリフ
「なるようにしかならん運命を受け入れて なるようにしかならん人生を生きてきた人間の気持ちはわかるまい」
「事実は真実の敵」
と対極をなすような言葉に感じちゃいました。
厳しい現実に立ち向かい真の自分の姿を追い求めて生きる男のロマンと、ただ目の前の現実を受け入れ、重荷を背負い込みながら生きる男の哀愁。
う〜〜ん、深いですな。
かつて方眉を剃って山に篭った大山倍達先生が仰った
「空手は愛」
という名言(?)がありますが、「愛」が万人の追い求める至高の心の領域であるとすると、ヒューマニズムの墓場たる社会機構から脱し、孤独と挫折と絶望の「吹雪の雪山」に自らを投じる覚悟がなければ現代人はそういう境地には至れないのかもしれません。