映画は時代を写す鏡

え〜、皆様あけましておめでとうございます。


さて新年にちなみまして、映画の時代性というテーマでちょっと書いてみます。

ゲッタウェイ [DVD]

ゲッタウェイ [DVD]

サム・北京ペキンパー監督の70年代前半の大傑作の「ゲッタウェイ」なんですが、原作小説が書かれたのが1959年、その後15年近く経っての映画化だったんですね。

何しろ間の60年代のアメリカというのが激動の時代であったものですから風景なんか様変わりしてて、原作に出てきた、藁を積んだ馬車が銀行のある大通りを横切るような風景はどこにも残ってないんですよね。

信頼関係の破綻した形だけの(いかにも犯罪者らしい)夫婦が主人公のこの作品が、なぜ70年代に入って映画化されたかと申しますと

ニクソン・ショックがあったからです。

これは米ドルが兌換性つまり金と紙幣を交換できる制度を廃止して、結果ドルの価値は現在のような相場変動制に、つまり紙幣が紙切れになり、それを「これはお金だ」と無理から信じ込んで経済活動を行うような状況になったんです。


これはつまり

信頼によって成り立っているはずの商取引が、その信頼がドルが兌換紙幣でなくなったと同時に信頼関係が破綻、経済、商取引の概念そのものを根底から覆すような出来事だったんです。

というわけで、「ゲッタウェイ」は この当時のアメリカの経済状況とアウトローであるが故にお互いを信頼できない犯罪者夫婦のドラマをかけたところがペキンパー流の風刺だったんですね。

ところで

アメリカ経済はその後80年代には血で血を洗うM&A戦国時代やら90年代のダウンサイジングで自国内の工場を閉鎖、安い労働力を求め工場を海外に移転するなどのダウンサイジング(?)、そして、力あるものがやりたい放題の新自由主義と節操なく暴れ狂うような経済活動が当たり前になってまいりました。
かつてH・フォードが唱えた「フォーディズム」なぞは一体どこの国の話だったんだ?って感じです。

映画では尻切れトンボになってる「ゲッタウェイ」のラストなんですが、原作の方で主人公は悪党たちの約束の地「エル・レイ」にたどり着きます。
そして彼らがそこで見たものは・・・・・

まあ、小説も現実も似たり寄ったりということで・・・・・・