らっりこう♪

悪魔の赤ちゃん [DVD]

悪魔の赤ちゃん [DVD]

この映画を作ったラリー・コーエン師(通称ラリコー)について書きまする。

この監督兼脚本家さんなんですけども、70年代のブラック・イクスプロイテーション(黒人が主役の映画)ものとか低予算ホラーとかで活躍して後のタランティーノ(と那須博之)なんかに若干影響を与えた方なんですが・・・

全部というわけではないんでしょうけども、この師のお書きになる脚本と申しますのがですね、どういうわけかユダヤ教(そんな崇高な信条がおありなのかどうかはさておき)の教理のキーワードの一つである「父性」を全面に押し出したものが多々あります。(ちなみにラリコー流の父性とは「何があっても家族を守れ」「父ならば家族を許そう」みたいな感じで、ユダヤ教のそれとはチト趣が違うようです)

おまけにBEの映画とか撮ってるくらいだから民族主義があらわだったりします。

一番上の「悪魔の赤ちゃん」なんかは、父親がアイリッシュ魂について語るシーン(親子の絆を表現する伏線)があったり、ラストで化けモンになって生まれてきた赤ちゃんと体面するシーンで父親が父性を爆発さして赤ちゃんをかばおうとしたりするシーンがあったりします。

ただ、

この映画自体、とてつもなく低予算で作られた馬鹿映画でして、モンスター赤ちゃんが田舎の用水路に浮かんでるモグラの水死体みたいだったり、赤ちゃん=ミルクが好き という単純な発想から牛乳配達の車を襲撃したり(冷たい牛乳が好きなのは赤ちゃんではなく銭湯好きのおっさんである)作品を通じて失笑の嵐なんですな。


黒人ギャング映画の金字塔(多分)のこの映画ではですね、黒人のシマを狙う日本のヤクザとの抗争(何故か素手ゴロ)において佐藤蛾次郎のそっくりさん大会みたいな日本ヤクザ軍団が短い手足でパンチやキックを繰り出すのを黒人の長い手足で全てとめてしまうという吉本新喜劇池乃めだか師匠がよくやるネタを披露してくれるんですよね。

やっぱりブラック・イズ・ビューティフル、ブラック・イズ・ストロングということなんでしょう。(説得力に欠けるけど)

そして、この映画の一番スゴイところは何と言っても  主人公のギャングのボスが敵対組織に命を狙われてカタギの親父(老人)の手引きで身を隠してる間に、あろうことかこの爺さん(注:カタギ)息子のシマを横取りして自分がボスとして君臨して、敵対組織のボスを何のためらいもなくブチ殺して利権を拡大していく(注:カタギの爺さんです)という無茶なストーリーが展開していく所です。(この時に流れるエドウィン・スターの挿入歌も秀逸!)

そんなジャック・ニコルソンもびっくりなブルータル極道(注:くどいようですがカタギの爺さんです)ぶりを発揮する父と利権を巡って主人公は骨肉の争いを繰り広げたりして(追記:抗争を繰り広げたのは舎弟の「B級映画の顔役」トニー・キングでした)、その後ちょっとだけ色々あって、最後に自分の息子の将来を思って野心を捨て姿をくらまします。

やっぱり「父性」や「家族」は大事だなぁ。という無理やりな〆方がラリー師の脚本の常套手段のようですね。


ちなみに

ラリー師の最近の作品でもやっぱり「父性」ではありませんが「家族」っていいな、という「まんが日本昔ばなし」のエンディング・テーマのような〆方でした。(一番上の「悪魔の〜」のキャストにシャロン・ファレルという人がいるんですが、「フォーン〜」のコリン・ファレルと何か関係あるんでしょうかね?)

まあ、こんな素晴らしいラリー師の映画に女の子を誘ったりなんかした日にゃどんな結果になるかは目に見えてますわな・・・ハァ(泣)