神とか愛とかそれとか・・・

え〜、この映画の中で、かの有名な作曲家のモーツァルトオーストリアの皇帝さんの前で史上初の全編ドイツ語によるオペラの企画を持ち出すシーンがあります。で、その時一緒にいたイタリア人の作曲家(?)たちから嘲笑を受けるのです。「ドイツ語なんて芸術には向かないよ、それにドイツ語でしか表現できないようなドイツ的な『美徳』とは何だというんだね?」と尋ねられたモーツァルト、すかさず「それは『愛』です!!」と答えるんですが・・・

この「愛」という言葉、どうも意味がこの場合ですと我々が頭に浮かべるのと違うようでして、それを色々と調べましたら、
キリスト教的には「愛」=「神」という風に使われることがあるようで、「俺たち(ドイツ人)、髪も金髪で目も青くっておまいらよりカッケーよ、神様は俺たちをこういう風に作ったんだから神様は俺たちの味方なんだヨ」と、このシーンでモーツァルトさんは言いたかったんではないでしょうか?

こうしてアーリア人至上主義のヤヴァイ思想は20世紀まで受け継がれていくのでした・・といった感じか。

で、フロイト心理学ではですね、人間の心の中の未知の部分というか宗教的にブラックボックスにしておかねばならないであろう部分を「エス(ES)」と表現するんだそうで・・(追記:「イド」でした。)

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まあ、ドイツ語ではES=「それ」とか「神」の意味なんでそのままなんですけどね。

で、フランスの文豪でもあり映画界にも様々な形で関与してきた偉人の一人マルグリット・デュラスさんは「愛」という言葉(仏語だったらl'amour か?)を使うのを嫌って上記のESの仏語訳「CE(ス)」を多用したそうでがんす。

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ところが彼女の自伝であるこの作品では日本語タイトルがアレだし、最後の最後で「私は彼を愛していた」というセリフが挿入されててこのこだわりはスルーされてましたが。


結局のところ、愛とか神とかそれとか色々と言葉を変えてみましても基本的に形がないものなんで、映画として表現するのが難しいところなんで、甘くて切ないラブロマンスの映画を観て全く愛を感じなくても文句を言わないように一つお願いしたいところですね。

で、次回はこの「愛」をテーマにして無理やり話をまとめようとして結果馬鹿映画になってしまうSFとホラーの定番プロットのお話です。