痛恨の親父ギャグ

タンゴ [DVD]

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え〜、フランスのエロくてわけのわからない映画ばかり作る監督、パトリス・ルコントの映画「タンゴ」でございます。


この映画は浮気がばれて女房に逃げられた男が叔父の裁判長(ニューシネマパラダイスの名優フィリップ・ノワレ)のアドバイスで女房への未練を断ち切るために女房探して殺しに行くという「どう考えてもストーカーだろ、それ」とツッコミを入れたくなるような内容をさらりと見せるコメディです。


で、この女房さんというのが実は結婚前は看護婦をしておりまして、離婚後はかの有名な「国境なき医師団」に同行してアフリカにボランティアで看護婦の仕事をしに出かけていたんですね。

で、その情報を聞いたフィリップ・ノワレが主人公の嫉妬感を煽って殺害を決意させるためにこう言うんですわ


国境なき医師団に下着なき看護婦を」

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もうこの時点で「停止&巻き戻し(見たのがビデオの時代でしたんで)」の作業にかかって最後まで見なかった人も数多くいるんではないでしょうかね?


だってアレですよ。フランス映画ですよ?男と女のドロドロを描いた作品ですよ?登場人物は上流階級の人間ばっかりですよ?

そこにもってきてこの高架下の立呑屋でコップ酒呑んでる親父みたいなギャグが炸裂ですよ?僕巻き戻して確認しましたよ。(確かに「めでぃさんさんふろんちえる」がどうのこうの言ってた)


パトリス・ルコントという監督は本当に変わってて日常の中に潜む官能的なエロスの世界を描くのかと思いきやブルース・リー原理主義をひたすら描くだけの「髪結いの亭主」とかタイトルに女の名前を持ってきといて肝心の女がどっか行ってしまうという「イヴォンヌの香り」とかとにかく「官能のエロティシズム」という接点で格調高い性生活を見たがる観客に昼間っからどこかの突堤で鬼殺し呑みながら釣りしてる駄目親父の精神生活を見せたがるんですよ。

橋の上の娘 [DVD]

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これなんか、S学会員の女にやっかみから『体育会系の男の悩みは70%が早漏と勃起不全なんだぞ!』と暴言吐くという体裁もへったくれもかなぐり捨てて「男から親父へ」のメタモルフォーゼ成し遂げてしまった主人公を描くだけの映画に仕上がっておりまして、ルコントさんは「官能的なエロスの世界を渡り歩くと行き着く先は親父であった(そして女からは相手にされなくなる)」という実は非常にディープかつニヒルな映画を作る監督であることがわかるんですね。