人の話を聞かない男

というわけで見てきましたよ。「ゴジラ」以来10年ぶりくらいのローランド・エメリッヒ監督の映画はじめ人間ギャートルズTHE MOVIE」「10000BC」


まずですね、みなさん、この映画の主人公たちが暮らす村に注目してください。

雪降ってます。

マンモスをみんなでつかまえてます。(マンモスの肉がおいしそうに見えるとこらへんの演出がギャートルズファンにはウレシイ)


ということで、みなさんは氷河期末期くらいの石器時代を思い浮かべるんではないでしょうか?


しかし、


この映画のタイトルは「紀元前1万年」 そう、氷河期なんかとっくの昔に終わっててそろそろ世界中のどこそかしこで農耕文化が発達しだして現在につながる文明が芽を出しはじめた時代なんですよ。ポスターには雪景色をバックにマンモスが映ってるんでみんなすっかりだまされちゃうんですけど、ここらへんはこの映画の壮大なひっ掛けになってるんですね。


で、かつては「スピルバーグのパチモン」みたいに言われてたエメリッヒ監督が果たしてその汚名を払拭するような新機軸を打ち立てられるのか?というのが僕的にはこの映画の命題だったんですが、当の監督はそんなことはなんとも思ってなかったんでしょうか?新機軸は打ち出してるっちゃ打ち出してるんですが「打倒!スピルバーグ」的なものではないんですよね。


さて、その新機軸の一例として今回ご紹介するのがコチラ

「伏線やぶり」です。

これってとくに女性の脚本家や小説家に多いんですけど、話の前後に何らかの一貫性を求めて伏線を張りたおしたりとか、同じBGMが何度も登場したりとかその手の演出に凝るのが、まぁハリウッド映画なんかでも一般的なんですが、(とくに映画だと上映時間が2時間くらいだから伏線を張ってても観客がうっかり忘れてしまうことが少ない)

で、この映画の場合はどうかというと・・・・

主人公がとにかく 馬鹿、臆病、優柔不断 というどうしょうもない性格なもんですから


恋人との約束をことの重大さに気付いて尻込みして反故にしてしまう。(そして一旦フラれる)

偉大なる先達の命令を忘れて先走り、トラブルを起こして親友に尻拭いを任して自分だけトンズラ(そして親友は悪者に拉致られて奴隷に)

「暗い夜道で活動してはイカン」という先達のアドバイス忘れて夜中に狩りをして穴に落ちる

強大なる支配者を打ち倒すために様々な情報や助言を集めるが、その情報と助言(つまり作品上の敵役を倒すためのルールね)を聞いた端から忘れていって結局、それらと全く関係ない最も原始的な方法で打ち倒す。


と、前に張られた伏線はことごとく破られていき、どう考えてもドテチン以下の知能しか持ち合わしていない主人公が新しい時代へと(2時間で)人類を導いていくという実はマンモスやピラミッドなんていう小道具以上に「ありえねー」ストーリー展開のお話なんですが、「伏線を張っては、それを破り、あるいは無視し」というある意味度肝を抜く展開が続いた結果妙に納得させてしまうというのがこの映画の肝なんですな。


それともう一つこの映画には重大なテーマがあるんですが、それは次回書きます。