万国のクドメンよ団結せよ


え〜、前回に続き反町アニキについて書くです。


さて、この興業成績が異様にふるわなくて「青ざめる狼」と揶揄されてしまった本作なんですが、あの角川春樹大明神入魂ということなので常人の理解を越えた作品になることは必定であり、そりゃ売れんわ、の一言で終わってもしょうがないんです。


しかし、ここでもめざましい活躍を見せるのは反町アニキをはじめとする「90年代に颯爽と登場するも、某J事務所の政治力に負けて美味しい仕事を全部あのお方に持ってかれたかつてのイケメンの方々」袴田吉彦、保阪尚輝です。(それに若手の松山ケンイチなどがからむ)

映画自体はですね。ハルキたんの趣味である往年の大映スペクタクル時代劇(日本人だけで外国が舞台の大河ドラマをやるやつ)の雰囲気なんですが、そこに反町アニキを主演におごることによって

50年代の大映スペクタクルと70年代のブラック・エクスプロイテーションの出会い

とも言うべき珍作に仕上がってます。(どう考えても昨今の邦画バブルの流れに反してます)

なにしろ反町アニキがクドさ全開で凄まじく、おそらくこれを劇場の大画面で見たら悶絶必至でしょう。しかし、そこは事務所の政治力に頼らないで芸能界を生き抜いてきた反町アニキ、巧みにこのクドさを処理してくれるんですよ。どういうことかというと要はノリが少年サンデーのスポーツ漫画チックなんだね。血なまぐさい戦記ものなのに。

若輩部族を列強部族の手から守り、次々に敵を制覇していって領土を拡大していくサクセスストーリーはさながら「県大会突破ぁ!」みたいなノリだし、後半の息子との確執も「先輩!僕もレギュラーで前線に出て戦いたいです!」みたいな感じで描かれているんで、貧困にあえぎ、どん底からのスタートから世界の半分を手にした猛者ジンギスカンの生涯とはとても思えないいい意味でのヌルさを出してるんですわ。

で、何度も書いてしまうんですが、この映画、ジンギスカンの野蛮で冷酷な面には一切触れられておりませんで、一族から鼻つまみにされかかって骨肉の争いを繰り広げたり、義兄弟との宿命的な対決があったり、母と嫁を息子の処遇をめぐって揉めてしまい家庭に居場所をなくして仕事(戦争、というか大殺戮)に没頭したり、とナイーブな面ばっかりが強調されてるんですが何しろ主役が反町アニキだもんですから、義兄弟に自らの手で尊厳ある死を与えたり、愛する息子の死を看取ったりと、悲しい別れのシーン、シーンで


凄まじい形相を(アップで)見せてくださるんですわ。

この形相だけでもこの映画一見の価値ありです。僕はアニキの凄まじすぎるあの形相を一生忘れないでしょう。(インパクトだけならアーネスト・ボーグナインを越えてます)