元ネタです。
え〜、一体誰が何のために作ったのかわからない動画ですが(笑 このモノクロの写真の人はフランス映画の名優、ジェラール・フィリップさんなんですね。
この人はかの文豪、アルベール・カミユの王様ゲーム超大作「カリギュラ」の舞台の初演に主役で抜擢されたかと思うとフランスの戦後初の超大作「パルムの僧院」で主役をはるというフランスの貴公子と呼ばれるにふさわしい二枚目ぶりを発揮した男でございます。
中でも「パルム〜」ではですね、その後アメリカに輸出されて不良文化の礎を築く「リーゼント」と呼ばれるいかついヘアスタイルを生みだし(物語の舞台は1820年代ですから時代劇です)不良の歴史にその名を残すんですね。
んで、「カリギュラ」にしても「パルム〜」にしても共通して言えることですが21世紀になった現代の人間が観ると
とつい言ってしまいそうなくらいセックス&ヴァイオレンスの嵐!嵐!嵐!なわけなんですよ。
カリギュラなんてローマ帝国にその名を刻んだ大暴君なわけですし、「パルム〜」の方も主人公は野獣のような破戒僧(山田風太郎の「柳生十兵衛死す」は実はこの「パルム〜」が元ネタでその中に出てくる一休さんがこの「パルム〜」の主人公ファブリス君がモデルなのです)だったりします。
フランスという国は革命によって王様を処刑して現在の共和国制になった歴史的背景がありまして、「モラル」と「ヒューマニズム」というものを切り離して考える独特(大陸ヨーロッパ的には普通なんでしょうけど)の価値観があるんですね。ここら辺が英国とは決定的に異なる部分です。
王様(国民にとってお父さん的存在)をぶち殺すなんていうブルータルな行為も
人間だもの
で許されるんですね。実際。そして天真爛漫に外道の真髄を銀幕狭しと披露するフィリップさんに観客はヒューマニズムの極北を見るわけなんですな。
さて、この「パルム〜」の主人公ファブリス君ですが実は歴史上の人物にモデルが何人かおりまして、中でも有名なのがマケドニアのアレキサンダー大王なんですよ。
んでアレキサンダーといえば
この映画の主人公は名前がアレックス君でしたよね?そう、「時計じかけのオレンジ」の元ネタはフランス文学の(かなりベタな)古典「パルムの僧院」なのですよ。
アレックス君のウルトラヴァイオレンスぶりを見て「おおう!なんて斬新なキャラなんだ!!さすがUKは時代の最先端だぜ!!!」とか思ってる人にはフランスにはその100年以上前にすでにそういうのが存在したのを親切に教えてあげましょう。
ついでながらG・フィリップが舞台で演じたカリギュラ帝ですが、その後1980年(だったかな?)には「時計じかけ〜」のマルコム・マクダウェル主演で映画になってるんですね。(カミュのそれとは関係ないけど)
ここらへんからも「パルム〜」と「時計じかけ〜」とのつながりがおわかりになるかと思います。
こんな風に映画の元ネタを探る時は大陸ヨーロッパの文学作品を調べればすぐに出てきますよ。英文学で無理やり調べても相当こじつけないと引用できませんから。