最強伝説 信雄

えー、というわけで前回に引き続き、お話は「東宝難病エクスプロイテーション物」の元祖黒澤明の「生きる」に行くわけなのです。



まじめだけが取り柄の初老の市役所員の志村喬は妻に先立たれ、息子夫婦には疎まれ、生きる意味を失いかけておりました。そんな志村を東宝名物「難病」が襲い「ノーフューチャー!!」とばかりに夜の街に繰り出してはかない人生を憂いつつ人生最後の放蕩三昧を行います。

そして夜のおねいさんに恋したりあれやこれやの末に市民のために滅私奉公することに自らの存在意義を見出し、必死のパッチで要望があった児童公園を作りそして仕事を終えた志村は完成した公園のブランコで息を引き取るのでした・・・・



というわけであらすじを読めばですね、このお話がゲーテの「ファウスト」を基にして作られた作品であることは多くの方が理解することかと思いますが、昨今の映画評論家の人たちというのは英語で書かれた書物以外は不浄であるとしてこれを読まず、ハリウッド支配階級民族であるところのユダヤ人と仲が悪いであろう(と勝手に思っている)ドイツ人は「4つ足で歩く穢れ」と認識して差別しておるようなので理解できないことでございましょう。

さて、この映画の見所といいますと、初老の市役所員の志村喬の親不孝な息子役で

金子信雄

が出演しております。そしてまだ定年退職もしてない年齢の父親に対して

「さっさと死ねばいいのに」

と「七人の侍」「ゴジラ」では野武士や怪獣相手に互角の勝負をする志村喬に対して命知らずすぎる発言をします。

んで、その言葉を聞いた志村喬はショックに打ちひしがれて布団の中で泣き寝入りしてしまいます。

東宝最強」のはずの志村喬を秒殺KOってどんだけ強いんだ?信雄。というのが個人的に妙に印象に残ってしまう映画でしたが、後に「東宝の至宝」こと塩沢ときが本当に難病にかかってこの映画に負けず劣らずのドラマチックな生き様をみしてくれるというなんとも言えないオマケがついてきます。


次回は「無法松の一生」とその元ネタになった「シラノ・ド・ベルジュラック」について書こうと思います。