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個人的にシリーズの中でもかなり好き(サントラも)な部類の「007 リビングデイライツ」です。

この映画の肝になる部分なんですが、最初のシーンでわけもわからず呼び出されたボンドがKGBの要人の亡命の手助けをさせられるところ。
狙撃銃のスコープ越しに綺麗なおネイチャンが自分と同じく狙撃銃をかまえている姿を目撃します。

これは何を意味しているかというと。

お国のためとはいえ任務遂行のため道具としてこき使われる自分の姿をスコープ越しの美女に見出したのです。

それ以後のボンドの怪行動(というかご都合主義なシチュエーションに自ら突っ込むだけ)のモチベーションとなる、「他者への共感」が語られるこのシーン。あれ?どっかで見たことあるような・・・と思ったらこれでした。

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え〜、これね、フランスのミステリーの巨匠ジョルジュ・シムノンの原作のヤツでレディ・ゴダイバのお話を知ってなければ何のこっちゃわからんようになってますが、仕立て屋といえば「ピーピング・トム」の職業なんですな。つまり覗きがテーマ。

んで、覗いた相手が悪い男に騙されてるのを目撃してしまって自分の暗い過去とオーバーラップして共感してしまって、何とかその女性を助けようとしてしまうというお話です。


この「リビング〜」自体は話の持ってき方がけっこう上手い(途中で最初の設定がほとんど破綻するけど)しボンドの内面的な部分もしっかり描いててシムノンの話を元ネタにしたというならパクったというよりもうまく取り入れたもんだなぁ。と思えるような出来でしたし、文章や台詞で言い表せない「感情の爆発」たる「他者への共感」をうまく演技だけで表現できてたと思います。

ミャンマーで「殺人マシーン」であり平和な世界で自らを見失ったはずのランボーが非武装で難民支援する慈善団体に共感したり、と意外と現実の世の中も「共感」といった本能的な感情によって動かされているのかもしれませんね。