ウソはダメ!ゼッタイ!

え〜と、僕はこの映画が非常に嫌いなんですね、何でかって言うと主人公のロベルト・ベニーニさんが僕の親父とキャラ一緒だから。

ま、実際にはこんな無茶なオッサンではないにしろ周囲にはとにかく都合のいいウソをばらまくクセがあったのよ。そして本人は全く悪気がなかったんですね。

「醜い現実よりも美しい虚構こそが人生の花」っていう感性が強くってね。都合のいいウソにはつく人とつかれる人の双方の中に「そうであって欲しい」という願望があるわけだから現実より価値があるもの、っていうようなことも言ってたなぁ・・・。そんな親父に振り回されて続けて長年苦しんだ僕からしたらあの映画のお父さん見てると殴ってやりたくなるのよ。まぁ映画というのは因果応報論が支配してるんで「ウソつきはデマゴーグで人民を苦しめたヒトラーと一緒」ということなのか最後に死んでしまうんでけどね。

ほいでから、このお父さん、ユダヤ人でして、ご存知の方多いと思うんですがユダヤ人というのはイディッシュ語という英語やドイツ語によく似た言語を使うので(聞いた感じは似ても似つかないんだけれど)通訳なんかもできるんですね。んで、その腕をかわれてかホテルで働いてる。(日曜洋画劇場の吹替版で見たからはっきりしたことはわからんですが)ここらへんも英語が達者でそういう仕事に就いてた僕の親父とそっくりですわ。稼ぎが悪いから家族は貧困にあえいでたんですけどね。古文や漢詩(でも中国語はサッパリ)がスラスラ読めてそういう役に立たない教養が人間の価値を決めると信じてた男だったので周囲にはfabrice家がシオニストのごとく見えたことでしょう。発想の荒唐無稽さではいい勝負だし。



ほいでこの映画。ネタバレだけど1944年のワルキューレ計画が成功したことになっててヒトラーはこの時点で死んだことになってるんですね。実際にそれらしい証拠ってのがあってヒトラーの死体がまだ見つかってませんし。

確かにワルキューレ作戦で主人公たちはウソで政権をひっくり返そうとした。んで、ナチス側もヒトラー生存のウソでそれを拒んだ。さぁ国民はどっちを信じるの?ってなった時に結局ヒトラー生存、現政権維持を選んでしまった。もうカタストロフがすぐそこまで迫っているというのに危機打開の声に耳を貸さなかったんです。都合のいいウソを選んでしまったんです。

ここら辺にですね、監督の「新宿二丁目王」ことブライアン・シンガーユダヤ人です、そしてゲイ)さんの「人間の本質に迫る」気質が出てるんですね。なんか松本清張チックやなぁ。

果たしてこれがロベルト・ベニーニへの回答だったのか?それとも人類への啓示か?いずれにしてもやり切れなさだけが漂う結末になってますね。「信じるものは救われる」「何を信じるかにもよるぜ」ということか。

最後にですね、イタリアでは近年ドイツ語も公用語として認定されたそうなんです。イタリア語の使用を頑なにこばんで非差別地区になってたとこがあったみたいで実質的にこの差別が解消されたということらしいんですが(「激!極虎一家」に出てくる米田村みたいになってたらしい)これは多数の言葉が使えるばっかりに板ばさみで苦労したユダヤ人を演じたロベルト・ベニーニさんの功績なのかもしれません。