台湾ヤマハ&わかばマン 「俺の名は台湾ヤマハ」


というわけでとうとう当ブログにて上映いたします。脳内映画の第3弾「台湾ヤマハわかばマン」。一応最初に書いときますが話は「どぎつい」「がら悪い」「暴力的、差別的内容(ネトウヨが見てもドン引きするレベル)てんこもり」なのでこういうのが嫌いな人は見ないでね。お話は勧善懲悪ですが、私が好きなものが善であり嫌いなものが悪なので他人が見たら「うわぁ」な面もあるでしょう。なお、このお話はフィクションであり登場する個人・団体・事件は全て実在のものとは関係ございません。また、上映中のコメントはご遠慮ください。それではただいまより上映開始いたします。

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「台湾ヤマハ & わかばマン」

昼下がりの中国地方某所の某工場の社員寮の1室。建物の外からは庭の手入れをしながら聞いている寮長のラジオから建国記念日を祝う皇居からの実況が聞こえてくる。それを聞きながら男は自分の荷物をまとめた。

荷物と言ってもせいぜいバッグにおさまりきる程度のものだった。荷物をまとめ、Tシャツ、カーハートのペインターパンツ、一張羅のライディングジャケット(イタリアのBREMA製)を羽織り、男が部屋から出ていこうとしたとき、背後で物音がした。

部屋に貼っていた裸の外人ねーちゃんのポスターがベッドの上に落ちたのだ。そのねーちゃんと一瞬目が遭ってから半年間世話になったその部屋に別れを告げて男は出て行った。

寮長に別れの挨拶をしてから駐輪場に向かい、愛車の台湾ヤマハ製スクーターBW’S100のエンジンを点ける。2ストの情けないエンジン音を響かせ男は出ていった・・・。

寮を出てから男は走りつづけ、山陰道を京都方面に向かって行った。そこで山奥の人気の無い場所にあるガソリンスタンドに立ち寄った時のことである。

何やら前の方から怒鳴り声が聞こえてくる。前に停まっているのは北米トヨタのFJクルーザーというRV車である。ムーンアイズの目玉マークやら星条旗と「Support Our Troops」という文字が書かれたアフガン・イラク戦争応援用のリボンステッカーが車体に貼られている。車の持ち主はガタイの良い若い兄ちゃんでデーハーな恰好のねーちゃんを連れている。この兄ちゃんがアラフィフくらいの店員のおばちゃんに怒鳴っているのだ。

「どないしてくれるんやババァ!この車冬のボーナスで買ったばっかりなんやぞ!」

と食い下がっているがおばちゃんは「すいません、すいません」と平謝りするばかり、給油中にガソリンを吹きこぼして車体にかけてしまったようだが、給油メーターはハイオクガソリン47リッター入れている。この兄ちゃんはそれに因縁をつけてガソリン代を払わないつもりらしい。そんな状況を見て男はこの兄ちゃんとおばちゃんの間に割り込んでこう言った。

「おばちゃん、悪いけどレギュラーで500円分だけ入れたって」

「なんや、お前は!?どけぇ!!」と兄ちゃんは男に食い下がった。それに対して男は

「すんまへんな、アニキ。後ろつかえてますねん」と申し訳ない顔をして言ってみたが兄ちゃんは「お前がつかえとろうが知ったことか!!あっち行っとけぇ!!」と男の胸をドンと押して追い払い再びおばちゃんを怒鳴りつけた。

追い払われた男は大人しく去って行ったかと思いきやスタンドの端に置いてあるノボリを立てているブロックを取って再び兄ちゃんの元へと戻って行った。

話は変わるが北野武監督の「アウトレイジ」という映画でヤクザが敵対するヤクザの頭を後ろからブロックでど突くシーンがあった。しかし、そのシーンではブロックの平面でど突いていたがあれは間違い。それだったらブロックより金槌やモンキーレンチ、懐中電灯などの方が威力がある。本当は

ブロックの角でど突くのである

というわけで男はおばちゃんを怒鳴りつけている兄ちゃんの背後に忍び寄りブロックの角で兄ちゃんの後頭部をど突いた。「う〜」と情けない声をあげてうずくまる兄ちゃんを見て「アレ?大の字に倒れない。まだ意識があるな、力抜きすぎたか?」と思い、うずくまっている兄ちゃんの顔に蹴りを入れつま先で鼻っ柱が折れたのを確認した。これで戦闘意欲は削いだ。反撃はしないだろう。次に兄ちゃんの連れてるおねーちゃんを確認した。血の気が引いた様子で後ずさりしてる。襲ってくる気配は無い。戦闘モードを解除した男は言った。

「人が下手に出とったらエエ気になりやがってボケが。何がボーナスで買うた新車や。こっちは半年働いたのにゆんべ雇い止めくらってまた失業者やぞ。正社員なったら何やってもええんか?この世はオドレの天下か?ここオドレの私有地か?コラ!?」と、止まらない鼻血と朦朧とする意識に苦しむ兄ちゃんに言った。が聞ける状態では無く、連れのねーちゃんが泣き出しそうな顔で「すいません、すいません」と言い出した。男はそっちの方に向き直って

「ねーちゃん?これアメ車か?」と聞いたら「え・・・と、アメリカ製のトヨタやからそ、そうです」と自信無さそうに答えたので男は「あんなぁ、ねーちゃん。アメ車いうのは塗装がものすごい頑丈なんや。ガソリンかかったくらいでどないもならへんようにでけとるんや。これがアメ車やったらガソリンかかってもどないもならへんはずやろ?」と聞いらねーちゃんは「は、はい」とうわ言のように答えるだけだったので男は続けて「でもこの兄ちゃんはガソリンで塗装が痛んだ言うんやからアメ車や無いかもしれへんな。俺がちょっと調べてみたるわ」と言って持ってたブロックで左のドアを思い切り叩いて凹ました。「あれ〜?アメ車は頑丈やからこんなんで凹んだりせぇへんねんけどな〜」と言いながらブロックで車体を手当たり次第叩きまくり「こんなクッサイ男が乗っとったら車内の空気悪いやろ?空調効くようにしたるわ」と言ってフロントとサイドのガラスも叩き割った「なんや?ボロいなぁ。これアメ車ちゃうで、ねーちゃん。今度からシボレーとかフォード買いや」と言いながらねーちゃんの方を向くとねーちゃんは泣き出していたのでブロックをボンネットの上に放ってねーちゃんの方に向かい肩をポンポンと叩き、微笑んで言った。

「ねーちゃん、泣きなや。北米トヨタなんかどうせクソ車やないか」

そんなこんなで北米トヨタに乗った正社員バカップルにきっちり詫びを入れさせガソリン代を払わして追い返した男は車が出て行くのを見届けてツバを吐き、店員のおばちゃんに振り返ってニッコリ笑って言った。

「おばちゃん、もう大丈夫やで」

おばちゃんは、「どうもありがとう」と言いながら男のスクーターにハイオクを満タン入れてくれた。「悪いなぁ、ええのに〜、あんなボケしばいて親切にして貰っとったら俺そのうち金持ちになってまうわ」と男はおどけながらお礼を言った。

おばちゃん「こんなにスカッとしたのは本当に久しぶりや!あいつらええ会社の正社員やから言うてホンマ偉そうに」

男(ちょっと下目使いで)「まぁ、今日び、どこの会社も他人を傷つけても何とも思わん奴しか正社員はつとまれへんからね」

おばちゃん「ところであんた、雇い止めくらって失業したってホンマなん?」

男「うん」

おばちゃん「あんたみたいなええ人が失業して、あいつらみたいなカスが正社員なんて世の中間違ってるわ」

男「まぁ、そのうちエエこともあるやろ、ほんじゃ、ガソリンありがとうな」

おばちゃん「あ、待ってお兄ちゃん。名前は?」


そう聞かれて男はチラリと自分の愛車を見てから本名を名乗るほどでもないと思いいつも使ってる通り名を名乗った

「台湾。台湾ヤマハ


つづく

※「(北米)トヨタなんかどうせクソ車や」という台詞とトヨタ車を叩き壊す展開は小説「Cutter and Bone」からいただきました。