台湾ヤマハ&わかばマン 「男の傷」

これが、前回の展開の元ネタの映画「Cutter's way」のシーンです。シオニストのおっさん(原作ではシオニストの女の小学校教師、アメリカで一番こうるさいタイプの女である)の乗ってるトヨタが自分の家の前に駐車してあったのでぶち壊した後で警察をうまく丸め込んでから言う台詞が「TOYOTA is a shity car anyway」なんですわ。「ハーレー&マルボロ」と「Cutter's way」ってプロットもよく似てて両者を比較してみると面白いと思います。どちらもMGM配給でコカコーラがスポンサーですし。

それはよしとして、「台湾〜」は次の展開を思いつくまで更新が無いので気長にお読みください。そして今回と次回は説明ばっかでめっちゃかったるいです。なお、このお話はフィクションであり登場する個人・団体・事件等全て実在しないのよん。

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前回「台湾ヤマハ」と名乗った男について説明しよう。この男の本名は楠 美喜郎(くすのき みきろう)23歳。「台湾ヤマハ」は高校時代から乗りつづけている愛車の BW’S100から取られている。
この男、幼い頃は神戸に住んでいたが震災で家が倒壊し、父を亡くし、母は彼を捨てて他の男と再婚し、彼は大阪某所で模型店を営む祖父母の家で暮らすことになった。その後、喧嘩に明け暮れたご近所でも評判のごんたくれとして育った彼の体はガチムチマッチョで背も181cmある。短く刈り込んだヘアスタイルに彫りが深くパッチリした目元に高い鼻と、どこかラテン系な雰囲気を漂わせる顔立ちである。興奮したり酒を飲むとうっすら浮かび上がる細い傷跡が眉間から右の頬にかけて刻まれてドスが効いているが、年齢も若いせいもあってどこか少年のあどけなさも残っている。

この顔の傷については追い追い話がうまく進めば説明していくが、ヘソのまわりには「FIGHT THE FUTURE」とゴシック体でタトゥーが入れられている。どういう意味合いがあるのかは不明。

さて、この男が雇い止めをくらって失業した経緯だが実はちょっとしたわけがある。これからその経緯について説明する。

2年前のこと、18歳から2年間勤めていた会社を辞め祖父母の模型店を手伝っていた台湾にご近所の木下さんから相談事を頼まれた。

この木下さんというのが小さなラーメン屋を営んでいる台湾を子供の頃から可愛いがっていた子供好きのおっさんで容姿は往年の西部劇俳優リチャード・ウィドマークにクリソツである。ここのラーメンは麺を発注してる製麺所(木下さんの親戚が経営)の特徴で香りに若干クセがあり好き嫌いが分かれるがチャーハンは絶品でラーメンよりチャーハンの注文の方が多かったりする。
このおっさんの相談事とは娘のみすずちゃんのことである。このみすずちゃんというのが近所でも名の知れた「ヘンコ」つまり変わり者の超問題児で、台湾の小中学校時代の同級生。小学校の頃は授業中もヤクルトの空き容器に砂を詰めてマラカスのようにシャカシャカ音を出してリズムを取っているので特別支援学級に入れられた。いつもムスっとしてて無表情であり、口数もほとんど無い。というかまともに言葉が話せないと言っていい。知り合い以外にはほとんど口をきかず、口をきいても「金貸してーや」か「何か奢ってーや」の2パターンばっかりだ。これが最近ではさらに悪化して「金」「奢れ」と省略しすぎてわけわからんような有様なのだ。
そんなコなので中学出てから仕事もせずにブラブラしててしょうがないから父親が店で注文取らしたらお尻を触ってきた酔っ払いの客の頭をビール瓶でどつきまわすわ、調理をやらしたらボヤは出すわ、出前に行かしたら途中で缶チューハイ引っ掛けてベンリィで民家に突っ込むわのダメダメっぷりなので、店を手伝わすのは諦めて小さなスーパーのチェーン店に商品を配送する配送センターで仕分けのバイトをさせることにした。

んで、そのバイトなんだがみすずちゃんのことなので柔らかい厚揚げの上に重たい豆腐を置いてペチャンコに潰してしまい「お前、これうす揚げになっとるやないか!」と注意されても「うす揚げや、言うて売ったらええやんか」と居直るような有様なのだが、父親曰く最近様子が変だと言うのだ。

台湾曰く「あのみすずちゃんですで、おやっさん。『変や変や』言われてなんぼで普通なんちゃいますの?」と返してみたらおやっさんは「それがなぁ、最近文句言われずにちやほやされてるそうなんや」と言い出した。「確かにそれは変ですな」と、身も蓋もない結論に達した二人だが、おやっさんはそこで台湾にみすずちゃんのバイト先の様子を調べて欲しいと頼んできた。

子供の頃から親がいない自分を可愛がってくれたおやっさんの頼みだったので断り切れなかった台湾は「探偵物語」よろしくこのバイトの周辺を洗ってみた。

様子が変なことと言えば、最近、件の配送センターに荷を持ってくるトラックに乗ってる若い兄ちゃん2人が出入り禁止にされている。理由は不明だ。そしてなぜか事務所で伝票整理で雇われたおばちゃんが商品を仕分けする作業の方にまわされ、みすずちゃんが事務所で伝票整理をやっている。事務所ではほとんどの時間、社員の男と二人きりだ。たまに主任と言われてるおっさんが訪れるくらいでみすずちゃんが仕事場で会うのはほとんどこの二人だけ。

このみすずちゃんのまわりにいる社員と主任が気になったので台湾はガラのよろしくない系の人脈を使って調べてみたところおどろくべき事実がわかった。

みすずちゃんといつも一緒にいる男の素性だが、この男の名は佐藤、南河内大学を卒業と履歴書的にはなっているのだが実際には卒業していない。在学中、大学の近くにあるトラックターミナルでバイトをしているうち、ある組織とコネを持ち、大学を中退してその組織に入った。まぁ、半端者のヤクザなのである。

そして、もう一人、主任と呼ばれてるおっさんだが、こやつもかつては保険の営業マンだったが勤務中に行った顧客への差別待遇が問題となり右翼団体が出てきて会社全体が恫喝され、それが元でクビになり、ある組織に仕事の口を求めて入っていた。(こいつの家は元々ヤクザだったのでそのツテに頼ったようだ)


さて、この二人が所属する組織とは大阪で、いや近畿全域から中国地方までの広範囲で悪名を轟かせる

石切(いしきり)連合だったのである。



つづく