台湾ヤマハ&わかばマン 「石切連合」

というわけで本当に行き当たりばったりなのにどうにか3回目を迎えた「台湾ヤマハわかばマン」でございます。ただ、今回は解説ばっかりでかったるいです。申し訳ない。このお話はフィクションであり実在の個人・団体・事件等とは無関係なんだけど阪神大震災のところの記述は50%くらい真実です(笑 登場する犯罪の手口も私が5分くらいで空想した代物なのでくれぐれも石切連合みたいなのとその犯罪が実在すると思わないでください。

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(前回の続き)

さて、佐藤という男と配送センターの主任が所属する「石切連合」なる団体について説明しよう。

この団体、最初はトラックの運ちゃんやってるヤっちゃんたちの互助会というだけの存在だったが組織の拡大とともに大きな組織にケツ持ちしてもらいやることも図々しくなってきた。組織の発展のきっかけは阪神大震災の時である。
この震災が起こった当時、大阪に拠点を置いてチェーン店を全国展開している大手デパートの社長が「今現在大阪にストックしてる商品の在庫を全て被災地へ支援物資として配送せよ」との指令を出した。ここは実に官僚的な社風のところなので社長の指令に100%忠実に下が動いて会社が大阪府内に保持してる商品の在庫をデータ上全てゼロにした。それを関連会社(ここは地域振興のため物流を全て地元の小さな運送会社数十社に任していた)に被災地まで持っていかすわけだが、ここで石切連合がしゃしゃり出て「待った」をかけた。
「素直にボランティアで被災地に配送するなんてバカバカしい、我々石切連合が商品を全ていただいて換金する。目をつむって協力したら謝礼を出す」とワッパ握り(トラックの運ちゃん)一同の前で宣言した。
しかしだ、気性は荒いが人情に厚いワッパ握りのおっちゃん達が素直に従うわけもなく、このデパートの社長というのが一代で財を成したカリスマ経営者で信奉者が多かったことから石切連合の意向に従う連中は少なかった。
そんな時、石切連合のメンバーは反対派の代表格のおっちゃんの前に立ちはだかり日本刀でこのおっちゃんの両手を切り落とし、2度とワッパが握れない体にした。これにビビった一同は石切連合に従うことを決め支援物資となるはずの商品の全てを石切連合のために配送し、換金、各々謝礼を受け取った。その結果、被災地にはこの会社からの数十億円分に及ぶ生活雑貨、食料等の支援物資は板チョコ1枚届かなかった。

その後、この一件で莫大な資金と横流しのルートを確保した石切連合は中小の配送業者に自分たちの配下を次々と送り込み連合メンバーでなければワッパ握りとしてやっていけないと言われるほどになると、今度は大企業の物流部門に進出しだす。
大手の会社は物流部門を子会社として独立して持ってたりするくらい会社内でも物流というのは規模がでかい。ここに入り込んで商品の原料やらその他の資材をごっそり横流しする魂胆だ。
一般に在庫というのは2つある、データ上の在庫と実際の在庫だ。このデータ上の在庫を操作して実際の在庫からデータ上存在しない「浮いた分」を作り上げてそれをこっそり持ち去る寸法(管理方法が複雑化すればするほどこれが容易になる)なんだけど、こういうことをやる人はどこの会社もまずいない。一番の理由は原料だの資材だのをかっぱらっても売り先が無いからだ。(売り先がある鉄骨なんかは別)これを石切連合は海外からもスポンサーを持つワールドワイドなヤクザなもんで売り先をいっぱい持っていて「換金率100%」をうたっている。それが可能になれば「さぁやろう!」ということになるんだが、やることの規模がでかくなると会社の管理業務の上の方まで買収しなければならないし、海外からの支援を受けて台頭した新興勢力なので「地元の人たち」とは対立関係にあり彼らの勢力を削がなければならない。ということでまず対抗勢力の押さえ込みだが、行政にコネが強い「地元の人たち」を抑えるために「改革」だの「維新」だのと銘打った政界の新興勢力を支援し、行政から「地元の人たち」を排除させることとした。
そして、管理業務のお偉いさんたちを懐柔する手段だがヤクザの懐柔の方法には3通りある。1、金を渡す 2、博打・薬とか非合法の遊びで接待 3、ええ女抱かす だが石切連合の場合3に特化している。政治団体支援してるから金がかかってしょうがないのだ。そして海外にもコネがある同連合なので「ええ女」のストックには事欠かないのはもちろんだが、さらに!このお話のテーマの部分があるのでここは強調しておきたい。

大企業というと大概本社が東京かあるいは海外にあり、大阪は支社とか支店である。だがその規模はでかい。そして本社から距離的に遠いのでわりと自由度が高い。んで、大手の会社の管理部の人間というと地元に顔が利くお坊っちゃん、お嬢ちゃんを営業的な観点から採用する場合が多い。
こういう銀のスプーンを握って生まれてきた質の人間というのは自分のまわりにいる人間以外は(悪気は決してないのだが)同じ人間と思わないのだ。んで石切連合は基本ワッパ握りの集まりであり、社会的にはブルーカラー、管理される側の人間ということで家畜のように見られてしまうのでキレイなねーちゃんを団体の看板として紹介して気をひかせることによってはじめて大手の企業の部長さんクラスの連中は石切連合を「同じ人間」として認識するようになるのである。これはいくら大金を積んでもうまく効果があらわれるもんでは無い。石切連合がガラにもなくキレイなねーちゃんの枕営業に頼るのはそういう理由がある。こうなると普通の人と違って倫理観が希薄(これはマジで思います)な連中なので石切連合に協力するのに躊躇しない。喜んで連合に協力するのである。

そんなこんなで大手企業にもうまく入り込んで利益を上げ大阪の裏社会を牛耳った石切連合だが、どういうわけかおねーちゃんの注文が同連合のキャパを超えて寄せられるようになった。調子に乗ってあちこちに話を持ちかけ過ぎたのだ。

ここまでのお話だったら弘兼憲史が書いてもおかしくない範囲のお話だが、一生懸命あちこちからキレイなおねーちゃんを探してこなければならなくなって、末端構成員のトラック運ちゃんの嫁さんで中国の片田舎から18歳で嫁いで来たばっかりの右も左もわからんコまで無理やり引っ張ってくるというところまで来たら話は平松伸二方面にシフトする。実際、管理業務の世界には弘兼ゾーンと平松ゾーンの境界線は存在しない。双方が混在しているのだ。

見栄えをちょっとでもゴージャスにみせるためにおねーちゃんたちの歯をウン十万かけて総インプラントにしてみたりと娘を嫁に出すかのように大事に大事に扱う石切連合だがやってることは管理売春(愛人になったり、社内に送り込んで横流しの手伝いをさせたりとかもあるが)以外の何物でもない。



そんな目下、女衒商売にいそしんでいる石切連合のメンバーがみすずちゃんにアプローチしているということなので目的はほぼそっち方面で間違いないと確信した台湾はこの主任と佐藤の二人を口実つけて締め上げることにした。


つづく