カリブもいいけど瀬戸内もね

というわけでパイレーツ・オブ・カリビアンの3が絶賛公開中なわけなんですが

やはり日本人ならこれもいっとくべきでしょう。

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終戦直後の1948年瀬戸内海の島々を舞台にした海賊映画(実在しました)「犬死にせしもの」。

主演の真田広之佐藤浩市がその後ヤヴァいんじゃないかと思われるくらい何度も仲良く共演したり、(佐藤大兄のパパがXXXを公言してたり、監督の井筒さんの実家の近所がそういうとこだったりする関係からそっちのつながりかもしれません)真田広之がこの映画でやった手拭いハチマキスタイルをその後打ち上げの宴会で何度も披露するようになったり、「薔薇族系」のイメージを払拭して「ドープ系」へとキャラをチェンジしたり、とその後の関係者への影響を考えるとかなり重要な作品といえます。

で、この映画のテーマ「犬死にせしもの」ということなんですが、戦争で地獄を味わった復員兵たちがその後も戦地での恐怖体験からか生きる希望を見出せず、危険で違法な海賊稼業にあけくれて薬物におぼれながら、それでも自分の生きる道を模索して、国や戦争やGHQに奪われた「人間としての尊厳」を取り返し、生きる希望を見出そうということなんです。

個人的にはですね、僕は小学校低学年の時、担任のババァがちょっとキOガイ入ってたもんで道徳の授業の時に「アメリカは日本に原爆を2発も打ち込んだ。おじいさん、おばあさんの無念をあなた達は晴らさなければならない」と力説されて(つまり「死んで祖国の御盾となれ」と)非常に嫌な思いをしてトラウマになった人間なんで(小学生が「おまえらは死ななきゃ世の中の役に立てない」なんてことを言われたらどんなに辛いか想像してみてください)この映画を見たときは非常に共感したというか、「やっと俺の気持ちを理解してくれるものを見つけた」と思いましたね。

正直、僕は今でも映画が大好きで、普通の人より、映画という表現媒体の価値を高くみているワケですが、そのキッカケとなったのはおそらくこの映画あたりじゃなかったかと思います。

映画の内容はというと、これが大映特有の(左寄り)反権力思想が全編に貫かれてるんですが、そういう思想におそらく縁もゆかりもなさそうな「華麗なる暴力野郎」井筒和幸監督によってより肉感的な「魂の叫び」に昇華されてるんですな。
さらに「イージー☆ライダー」や「ヴァニシング・ポイント」等のアメリカン・ニューシネマやもちろんディズニーの「カリブの海賊」やらエロール・フリンが出演してた頃の大昔のハリウッドの海賊映画、果ては「ルパン三世カリオストロの城」まで、よくぞここまで詰め込んだ、と思わずにいられないほどいろんなオマージュが炸裂してて、そこに真田広之の「ヤク中」演技やフラッシュバック等のニューシネマ系の演出、敵役の蟹江敬三扮するノイローゼ気味のヤクザの破滅志向の演技など細かい見所も満載です。


そんな素晴らしい「犬死にせしもの」なんですが、この映画を観て大分経ってから井筒監督がテレビに出てくるようになり、この人が「犬死に〜」の監督であることを知った時のショックといったら

まるで犯されたような気分

でしたよ。
そういう意味も含めて今見ると非常に興味深い作品です。