メタフィクション一家

ハメット [DVD]

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前回の続きです。といっても何を書こうとしてたのかすっかり忘れております。

さて、ヴィム・ヴェンダース監督という人は昔からメタフィクションというのを好むというか技法としてよく使う人でありました。上に挙げてる「ハメット」なんてのはハードボイルド作家ダシール=ハメットの作品と本人が遭遇した事件について描かれております。

その他にもこのオッサン、カメラに映らない部分のストーリーを描くことに腐心してみたり、と常に虚構と現実の間にこそ境地を見出そうとしてるきらいがありました。


そもそもですね、舞台を意味する英語の「SCENE」というのも語源を辿ればギリシャ語の「舞台裏」とか「楽屋」なんかを意味する「スツェーネ」(綴りは同じ)から来てると言われておりまして、それが時代を経るごとに「見えないもの、見てはいけないもの」という境界線の向こうの世界だった部分をお客さんに見せる、つまり虚構と現実の境界線を取っ払うことに古代の舞台関係者たちは腐心してたようなんですな。(単に古代の劇場は舞台が狭かったので広くするために舞台裏だった部分を使うようになったともいえます)

表現媒体を舞台から映画に換えたとはいえこういう試みは古くから行われていて、それに熱意をかたむける映像作家は数知れず、で、そういう人たちが好む手法がメタフィクションというわけなんでしょう。

それにしても

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のそれは凄まじく、現実と虚構のみならず時間の観念からも境界線を突破するから複雑なんですよ(元ネタは「ゴッドファーザー2」だけど)大体いろんなところでお話を聞いて知ってはいたんですがいざ観てみるとやっぱり度肝ぬかれるなぁ。こういう映画でこういうダイナミックな構成の映画作るんだもの。

これをヴェンダース監督がやるんならいざしらず井筒監督がやるんだもんなぁ。


さて、前回紹介した両映画で主人公は虚構の世界から逃れて(?)家族の中に戻っていくんですが、そもそも家族というの血のつながりこそ実際にあれ人間の頭の中で作られた概念でそれ自体がフィクションともいえる代物なんですな。
その家族というフィクションをひたすら追い求めて現実とのギャップに苦しめられているのが現実の人間であり、それを描いた家族ドラマの中の家族というのも実はメタフィクションなのかも知れませんね。