勝新犯
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2007/02/23
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え〜、この映画についてまた書きます。
海老蔵さまといいますと、歌舞伎の市川系の人なんですけども前回書きましたようにエビさまほどウルトラセブンを感じさせる人は市川系にもおりませんでして、どうもそっちばっかに気が行ってしまうんですけども、よ〜く見てみると(よ〜く見なくても全編エビさまのアップばっかなんだけど)この人シーンシーンでいろんな表情を見せてくれるんですよ。
潜水艦の中で空気の薄さにもだえながら思わず上を見上げる表情(もちろんアップ)は「戦場のピアニスト」のエイドリアン・ブロディ。
悪友の伊勢谷友介と対峙するシーンでの相手を見据えてアゴを引いた表情は中村吉右衛門。
そして、いよいよ、人間魚雷「回天」に乗って特攻くらわすシーン(もちろんアップ&脂テカテカ)はなんと往年の勝新太郎にマジソックリ!!!!!
これには本当にビックリしましたよ、表情が寸分違わず勝新ですもん。
よくよく考えたらエビさまって市川系なのに顔自体は中村系の顔つきなんですよね、何故か。
だから上に挙げた吉さまと勝新のそっくり演技も可能なわけですな。
ただ、あれくらい勝新テイストを出そうと思ったらやっぱり京都に赴いて老舗の湯豆腐を100丁くらい平らげて伏見の地酒を20升くらい呑んで、変な借金こさえて身も心も勝新にならんと出せませんよ。
エビさまにとってこの映画がスクリーンデビューということなんで流派は違えどスクリーンで活躍した歌舞伎界の先達へのオマージュということなんでしょう。おふざけのモノマネとは次元の違う芸能の真髄みたいなものを感じてしまいましたです。
それにしてもこの映画、「男たちの大和」のどでかいセットの向こうを張ってエビさまや伊勢やん、そして今回はエビさまを密かに慕う男色鬼の役として、死に急ぐエビさまの運命を翻弄する影の大役をやった塩谷瞬の顔のアップ、アップ、アップだけで勝負するという暴挙に出てるわけなんですが、そんな「竹槍でB29を落とす」ような無謀な作戦を成功させてしまうキャストとひたすらアップを撮り続けたスタッフさんに盛大な拍手を送りたい気分になりましたよ。
僕は京都嫌いで奈良が好きな人間なんで歌舞伎見るくらいなら「能」見た方が上品でいいと思ってる人でして、しかもどちらかと言えば中村系をヒイキにしてた(やっぱりテレビへの露出が多いから)傾向があるんですが、この映画観て「たまには歌舞伎もいいかも」と思うようになりましたね。
これからもエビさまには中村の獅童アニキと競い合って映画の世界でもがんばって欲しいものです。
おまけの話
この映画のテーマの人間魚雷「回天」ですが、この回天のクルーを実際に見送った人のお話では、映画に負けず劣らずクルー全員非常に凛々しく逞しい男たちに見えたということです。表情は死への恐怖を払拭した清々しいものだったといいますが、彼らを待つ運命というのが実際には・・・・・・