ファイナル・デスティネーション

傷だらけの天使 [DVD]

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見ました、阪本順治監督作品のこの作品。

実は阪本さんというのを僕自身あまり存じておりませんでして、元・井筒和幸の弟子であるとか小泉元総理に似てるとかのそういう情報しかなかったんですよ。で、それ以前は「新・仁義なき戦い。」くらいしか見たことなくて。


で、この作品ですが、ショーケンこと萩原健一の代表作であるテレビシリーズの映画化ということなんですが、あくまでも劇場版オリジナルにこだわっててオリジナルを連想させる部分は人物設定くらいしかありません。(あとは兵庫県出身の人間国宝井上尭之氏のギター・カッティングをフィーチャーしたスコア)

その代わりどういうわけか同じく70年代に製作されたヴィム・ヴェンダース監督の「さすらい」へのオマージュととれるシーンが多々あるわけなんです。

さすらい [DVD]

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これも「傷だらけ〜」ももともと二人の自由気ままな男たちのお話なんですが、ロードムーヴィーになってるところがもろにこっちからのイタダキといった感じなんす。

でオマージュととれる部分を抜粋すると。


・トヨエツ(阪本監督と同じ大阪出身、気が合うらしい)のかけてるサングラスが「さすらい」の二人のかけてるソレと一緒。

・トヨエツのジャケットも一緒。

・ウOコのシーンはないけれど、旅の仲間の子供がよくトイレに駆け込む。

・「さすらい」のラストのクルマと電車の線路が交差するところで、別れた主人公二人がすれ違うシーンと「傷天。」の電車に乗ったトヨエツとクロードがとなりの国道を走る殺し屋のクルマとすれ違うシーンがよく似ている。


なんてのがあります。

まぁ、それ以外にも「雪の降る中アメ車のオープンカー(アメ車の場合は『コンバーチブル』という)で走る」なんて設定はフィンランドアキ・カウリスマキ監督がやってたことだったりいろいろあるんですけどね。


東北の雪の降る町並みは主人公の孤独感を表すのに効果的に使われてるし、世間や時代に逆らってわが道を進もうとする主人公達にじわじわと「現実の壁」という破滅が迫っていることを「殺し屋」を登場させることで擬人化することにも成功してる。

ドイツ映画が同時期に「ノッキン・オン・へヴンズ・ドア」を成功させたのと同様、日本映画もそれを迎え撃つ形でうまく男二人のロードムーヴィーを作っていたんですね。

どちらも未来=死であることを理解しながらも今を逞しく生きる熱き男たちを描いてるんだね。

こういう映画が(お金もさほどかからないと思うし)次々作られていけば日本映画も盛り上がると思うんですけどね。これがテーマが恋愛でもいいんだけど、見せ方が有名どころからいろいろといただいたおかげで(笑)上手く撮れてるですよ。


冒頭のクロード・マキの「飛べると思えば飛べるんだよ!」と「二人で(世間相手に)戦争するンじゃなかったのかよ!」という抽象的なセリフはなかなか日本語では表現しにくい部分なんですが、この映画ではうまいこと自然に使ってるなぁ、と感心させられました。

さて、阪本監督といえば、「新・仁義〜」の布袋さんが作ったテーマ(阪本監督ってギターのカッティングが好きなんですね)をタランティーノ監督が気に入って自分の作品に起用したりしてるんですが、彼と弟分のR・ロドリゲスの作品「プラネット・テラー」の中で「TWO AGAINST THE WORLD」というセリフが出てくるんですが、ひょっとしてこれってタラとロッドがこの映画のクロードのセリフからいただいたのか?