正平、寛治不在

遅ればせながら見ました。「力道山

もの凄い凝った映画で単純に感動させるだけの映画ではないんですね。これが。

太平洋戦争中から昭和30年代をCGとかを巧みに使いながら作った見事な映像や主演のソル・ギョンクの迫力ある演技、脇を固める名優さんのナイスアシストと見どころ満載なんですが、ただ、残念なことに諸事情によって省略せざるを得ない部分が多々あって話がわかりにくい部分があるんです。

例えば

力道山が菅野会長に取り入るために最初に軍歌を歌ってみせる場面があって、その後絶対に軍歌を歌わないんです。これは昔力道山朝鮮半島にいたとき両親を日本兵に殺害されたから日本軍(っていうか軍隊全部)を死ぬほど嫌っているからなんですがこの映画ではその話はでません。

・あと、力道山北朝鮮金日成にベンツを一台寄贈したりしてるんですがそれも省略。劇中は逆に南北どちらにも味方する気はないことを宣言するシーンがある。(実際これが本音なんでしょうけど)

なんてのがあります。(本当は北朝鮮生まれの帰化人のお話を韓国映画で撮るっていうのはかなり無茶な面があるんで描けない部分があってもやむを得ない面はある)


ただ、逆に言えばそれ以外は「そこはカットでいいんでは?」と思えるくらいいろんなエピソードがある程度史実に乗っ取って出てくるんですね。

で、最初から最後までわがまま放題し放題の暴君一直線なリッキーなわけですが、最後の方で実は彼が「私」の部分を捨てて「公」の人生を選んだ、つまり多くの人々が望んだ力道山でありつづけようとしていたというエゴを捨て自分を客観視できる「メタ視点」の持ち主であり、それゆえ人の上に立って活躍し多くの偉業を成し得たのであった、という結末はなんともいえず見事なもんでした。
でも結局、その人生の代償は高くつきすぎてしまったんですが・・・




おまけ

実は力道山の映画を撮るという企画は90年代中頃から井筒和幸監督が所望していたもので、それを先に韓国映画にやられたのでブチ切れ。
韓国への報復としてか、「パッチギ2」で韓国の済州島で大勢の犠牲者を出した「あの事件」のエピソードを盛り込み韓国へのネガティブ・キャンペーンを行っている。