オークラ・メタル・シティ

デトロイト・メタル・シティ」見てきました。

え〜、最近ナンビョー・エクスプロイテーションで調子に乗っている東宝が原点回帰したついでに脱線して東宝(及び社長の大蔵貢)にオマージュを捧げてしまったような作品とあいなりました。

東宝はこちら参照→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%9D%B1%E5%AE%9D

で社長の大蔵貢に関してはこちら→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%94%B5%E8%B2%A2



もうスーパージャイアンツの宇津井健よろしく松山ケンイチくんがタイツ姿で暴れるわ

「大虐殺」「憲兵とバラバラ死美人」みたいなタイトルの「SATUGAI」とか「恨みはらさでおくべきか」とか歌い出すわ

デスレコーズ社長にかつては女性雑誌でもて囃された「オシャレ」サイドの人間のはずの松雪泰子(最近は演技派の女優さんです)を俳して「童貞社員とよろめき夫人」みたいな展開するわ

明治天皇と大日露戦争」よろしくタブーを破ってジーン・シモンズみたいな大御所を連れてくるわ



話の内容をその気になれば全て新東宝の映画のタイトルだけで表現できそうな無茶な映画になってます、ええ。しかも全米で記録的大ヒットの「ダークナイト」と向こうをはって「白塗りの悪のカリスマ」をおごるあたりに東宝の(やけくそ気味の)意気込みが感じられます。



で、感想はというと原作のシーンを年季の入った役者さんたちの演技力で難なく再現するところなんかは圧巻だし、「オシャレ系」の音楽をモノホンのカジヒデキ(この人はコメディ映画が大好きだったはずなのでこの映画に関わることができたのをきっと喜んでいるはずだ)が担当してて「えっ!あの(マンガの中の)歌がこんなナイスな曲になってるの?」と思うくらい素晴らしい(いや、まじで)楽曲になってたりしてかなり個人的に楽しめました。

そして主人公のクラウザーさんこと根岸くんをアイデンティティの崩壊という無間地獄に陥れる三人の女たち宮崎美子松雪泰子加藤ローサ(全員九州の人ではなかったか?)の演技のうまさには正直恐れ入りました。

根岸くんのバレバレのウソを相川さん(加藤ちゃん)が実はウソだとわかっていながら「惚れた弱み」で信じ込んでしまうところとか何気なく心情告白になってるシーンがあったり、大蔵貢並に極悪でさらに彼とは逆に会社の政治力を武器にライバルバンドをどんどん潰していく社長を松雪さんがあまり嫌らしさを出さずに演じてるところとか、クラウザーさんの正体を見抜いた(ここが原作と違う)のを表情の演技だけで表現するお母さん(宮崎)とかはテレビドラマとかの小さな画面じゃなくて映画館でないとわかりにくい部分でした。

で、この映画の監督さん、狭いシチュエーションを巧みに使ったシーンが非常に上手なんですが、最後の大ホールでのシーンは個人的にはブライアン・デパルマの「ファントム・オブ・ザ・パラダイス」には今ひとつ及ばずでした。
というのもこれが原作を忠実になぞろうとする脚本のためなんでもし東宝が懲りずに「2」を作ることになったあかつきには是非オリジナル脚本で大画面を最大限に活かしたシーンを撮ってほしいものです。