新伍ちゃんに捧ぐ

日本の良心、山城新伍さんが亡くなられてしまいました。

今回はその追悼の意を込めまして上の「出たとこ勝負」ではなく「やらずぶったくり」の方をご紹介します。

不良番長 やらずぶったくり [DVD]

不良番長 やらずぶったくり [DVD]

この作品ですね、公害問題とか当時の世相を鋭く突いた何故か社会派の面が強い作品でして(他にも悪役がどう見ても競艇S川か岸S介とか色々あるんですけどね)、とある漁村にですね、缶詰工場が建つことになって漁民は工場が出来て有毒な廃液が海に流れて漁が出来なくなった見返りに高額な保証金をもらって朝から遊び狂うという土地が高騰しまくったバブル後期のような有様だったんですね。

んで、ひょんなことからその漁村に来た辰っつぁん率いるカポネ団(山城新伍・安岡力也・渡瀬恒彦芦屋小雁潮健児)は金が潤って退屈を持て余す漁民たちをカモに娯楽施設(賭場と女郎屋、って西部劇か)を作って大儲け。

ところが、一人だけこの保証金をもらうのを断り工場の建設に反対し、昔ながらの漁を続けようとする頑固親父がいたりします。(当然の如く殺されます)

これって明らかに非差別部落の助成金の問題が元ネタなんですね。(追記;助成金問題が浮上するのはこの映画の上映の後でした)昔は貰う(権力に迎合する)か貰わない(あくまで反権力闘争する)かで同じ地区でもモメにモメてたみたいです。(もちろん、ここで論争になってたのは「貰う権利があるか」ということではありませんよ、権利は当然にあるのです。そんなこともわからないような輩は「ボラット」や「ブルーノ」でも観て笑ってりゃイイ)

んで、最初は漁民たちが堕落していく手助けをしていたカポネ団ですが、結局は漁民を堕落させ→その隙に真面目な漁師たちが獲ってきた魚をあの手この手で巻き上げ→最後に保証金が底をついた漁民たちをゴミのように締め出す。という筋書きを悪者たちは企んでいたわけですが、この悪だくみに怒り水産会社の社長やら何やらを皆殺しにして最後はハッピーエンド。

というエンディングが後の山城新伍が自ら監督した「本日またまた休診なり」を観るとなんとも言えない味わい深いものになってきます。別に新伍ちゃんが脚本書いたわけではないんですが、何気に映画館に入ったお客さんに対して「正義とは何ぞや?」と問いかけるような作品に仕上がっているのは何とも言えない偶然といえますね。

不良番長は折しも高度経済成長が終わり、日本がガラリと様変わりしてなおかつベトナム戦争特需でさらに潤おうとしていた時代のお話、多くの人々は物質的な豊かさを受け入れて発展の妨げとなる公害問題やら何やらの諸問題に目をつむった、つまり悪魔に魂を売っちゃったわけです。
そんな経済発展の波に乗れずうす汚く生きる愚連隊の生き様を(とてつもなく馬鹿馬鹿しく)描いた不良番長シリーズの中でもスタッフ、キャストの「魂の叫び」が聞こえてくるような「不良番長 ーやらずぶったくりー」をご紹介しました。


最後になりましたが、これをご覧の皆さんもたまにでいいですから、夜空を見上げたり浜辺を眺めたりするときには東映スタイル(死んだ人間の顔が夜空に浮かんだりする手法;大森一樹東宝でもやる)で新伍ちゃんの顔を思い浮かベてくださいね。


この世ではあまりイイ役に恵まれなかったようですが、天国ではハリウッドスターと肩を並べられるようなイイ役やってください。
オレはどん兵衛食う度にあんたを思い出すよ!!

R・I・P