暴動 ファック YEAHHH!!!

というわけでウリ・エーデル監督の「ブルックリン最終出口」なんです。

一言で言うと「絶望」以外の感想がない「豚と軍艦」って感じの映画です(脚本書いたの日系人だし)

「豚と〜」と同様1960年前後の時代背景なんですけど、もうNYの貧民街のやりばのない怒り、悲しみ、絶望、焦燥なんかが凄まじいエネルギーとなって銀幕の中で暴れまくるパワフルな作品でございます。そのすごさを列挙していくと



1)暴動

2)立ちんぼ

3)ストライキ

4)日雇いさんのご祝儀ネコババする口入れ屋

5)早朝から日雇いさんたちを荷台にイナバ物置のCMよろしく満載にして走るダンプ

6)任侠映画しか上映しない東映系劇場

7)「千円でくわえてあげる」としつこく言い寄ってくるオカマちゃんの集団

8)駅前で盗んだと思しき自転車を路上で値札付けて売るおっさん

9)コイン駐車場に3ヶ月くらい放置された明らかに犯罪に使用されたと思われる他府県ナンバーの盗難車

10)昼間から血まみれになるまで喧嘩してる酔っ払い

11)公園で食用犬売ってるおっさん


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すいません 4)から後のは普通に21世紀の大阪の西○周辺でしたね。


洒落にならんネタはさておき、この映画見どころも多数あるんですが何といっても朝トイレを娘に占領されて「我慢できん」とアパートの窓から小便するバート・ヤング扮する下品なオヤジが舞台背景をすべて物語ってるんですが、娘が妊娠したことを知ったバート親父はそのお相手のところに乗り込むんですね。

そのお相手の色男「ハーレー乗り」として有名な男でして、1947年まで製造されてたナックルヘッドと呼ばれる型式のハーレーに乗ってるんです。

このナックルヘッドというのが「(右翼系の)頑固親父」とか「すぐ手を出す気が短い親父」というような意味があるそうで、エンジンのシリンダーヘッドの形状が拳に似てるというのとシリンダーヘッドが鉄製で熱がこもりやすくってすぐにオーバーヒートする弱点から皮肉(quick tempered knucklehead というと短気な暴力人間って感じだもんね)もこめてそう呼ばれているんだそうです。

んで、そのナックルヘッドから降りたところでこの色男、ナックルヘッドの見本のようなバート親父に殴られるんですね。ちゃんとハーレーの歴史や知識があってそれを活かしてのジョークなんですな。ここらへんはウリ監督なかなかセンスあるなぁ、という感じがします。(これくらいのジョークが理解できない浅学な輩はハーレーだとかヘルズエンジェルスなんかについてネットで語らんでくれ)

んで、バート親父に「責任取れ!」と言われてデキ婚させられたハーレー乗りの色男に憧れている花嫁の弟(バート親父の息子ね)がいるんですが、コヤツがお小遣いを貯めて中古でインディアン(1947年に倒産した会社のバイク)を買うんです。昔のバイクはセルなんて便利なものが無かったので全部キックスタートなんですがこれが慣れてないと難しい。
なもんで買ったばかりの弟は一生懸命キックでエンジンをかけようとするんですがうまくかからずキックのし過ぎでエンジンの中に混合気が入り過ぎてバックファイアーという「どかーーん!!」というもの凄い音がする現象を起こしてばかりいるんですね。

僕、実はこの弟と同じ年代(今だと70歳前後か)のアメリカ人の人と話したことあるんですが、貧民街の子供って郵便配達のバイク(これもハーレー)が停まってるの見つけるとこっそり何回も空キックやって戻ってきた配達員がエンジンかけようとすると思いっきりバックファイアーさせるというイタズラをよくやってたんだそうです。(自動車の場合だとスロットルを何回もひけば同じようになるんだそうです)

とまぁ、このように50年代のアメリカのちょっとガラ悪い街の風景を確実に押えつつ、ストライキ→暴動と同時進行で買ったばかりのインディアンを見せようと憧れの娼婦のもとへひた走る弟が最後に衝撃の光景を目撃するラストは「絶望」という二文字が変なカタルシスを与えてくれるなんとも言えないものです。

こんな感じでどこまでも「DQN,プロレタリアート、西成!」というノリで突っ走る本作はウリ・エーデル監督の作品の中ではおそらく最高傑作ではないかと思います。「バーダーマインホフ」の方は正直左翼というちょっと高級な人種を扱ってるんで期待できんけどこちらはパワフルな作品に仕上がっておりますので皆さんも是非この映画の「西成感」を味わってください。