地獄の片道切符
はいっ、世界一怖い顔の俳優ティル・シュヴァイガーさんが主演のサスペンス映画です。放題は「ザ・フィクサー」でしたね。
最近では何を勘違いしたのかタランティーノの新作なんかにも出てて大活躍の人なんですが、この人の売りといいますと何と言っても「怖すぎる形相」なんですね。
代表作の「ノッキン’オン ヘブンズドア」でもですね、最後に死を向かえる時の「逝き顔」があまりにも強烈すぎて彼に別段興味を持たなかった人でもこの人の顔は脳裏に焼き付いて離れなかったはずです。(個人的に「ロッキー3」の「ミッキ〜〜〜!!」と同じくらいの名シーンです)普通悪役でも死ぬときの顔はここまで怖くないです。
他にもノーメイクで悪魔を演じてみたり(そして観客にその設定を納得させられる)とか、常人ではできないことが奴ならできる、という稀有な存在です。
さて、そんな素敵なティル兄貴の「どうしようどうしょう」という狼狽や絶望する表情が楽しめるのが上の「ザ・フィクサー」なんですね。どんな映画かというと「レイプ裁判を巡ってとことんドロドログダグダする話」なわけでして、正直映画のテーマとしましたらとことんつまらない内容になるお話を
出演者全員が「(文字通り)ケツの穴までさらけ出さんばかりの」渾身の演技を見せて
TVドラマだったら2クールくらいで消化するはずの長いお話を2時間でまとめてジェットコースター感覚を演出し
レイプされた女性が孤独に打ちひしがれた時に見る幻覚であるマイケル・クラーク=ダンカン演ずる「黒い将軍(「ドーベルマン刑事」に出てくるミスター・グッドナイト似)」などの斬新な演出で急展開を無理無く進めて
非常にすっきりとしたエンターテインメントに仕上げているんですね。
舞台はNYで登場人物は誰もが羨むような仕事に就いてて、おしゃれなクラブやバーに通ういわゆるひとつの「ヤッピー」ばっかなんですね。みんな 勝ち組 なんです。(案の定ティル兄貴だけこの設定に馴染まず小池一夫チックになってますが)
それが同僚にレイプされるやら犯人の疑いをかけられるやら浮気がばれて離婚されるやらレイプの復讐で殺されるやらその犯人の疑いをかけられて裁判するやら家族の絆にヒビが入るやら最後の最後で衝撃の事実が明らかになるやらで
全員が全員 勝利のない 結末を向かえてしまいます。
一応映画というのは因果応報論が支配してますので助かる人は助かるんですが、決してハッピーにはならないんですね。
全てを失って(うっちゃって)やっとゼロの状態になった、というところで終わるのです。
しかしまぁ、これほどまで重くて問題が多い(表現の仕方によっては突かれる可能性大)題材をとことんエンターテインメントに仕上げる映画というメディアの魔力には感嘆してしまいますね。