バカ・イン・ザ・USA 

ハイっ、そういうわけで「ワイルド・ホッグス 団塊ボーイズ」のお話です。


え〜、この映画に登場する人物(男に限る)は全員


揃いも揃ってバカばっかりです

郊外に住む、割と裕福なはずの4人のハーレー同好会「ワイルド・ホッグス」が思い立ったが吉日とばかりに旅に出て、地方で荒んだ生活をしてる本物のバイカーと揉め事になり、あとはサボテン・ブラザースと一緒の展開・・・っていう話ですが、何気にアフガン・イラク戦争カリカチュアになってまして、
嘘ばっかりついて揉め事を引き起こしてしまうお調子者のトラボルタがブッシュ大統領

普段は論理的だがトラボルタが勇ましいこと言い出すとすぐに同調するウイリアム・H・メイシーがブレア首相(着てる革ジャンもイギリス製のベルスタッフだ)

ちょいとカトちゃん入ってて慎重にやるべきところで必ず「すんずれいしてしまう」ティム・アレンがチェイニー副大統領

「体を張ったボケ以外は認めない」ツッコミ担当のマーティン・ローレンスがパウエル長官。

とまぁ、こんな感じでして、対するアウトロー集団の「デル・フエゴス(スペイン語で炎のこと、名前が伏線になってる)」なんて連中は「ワイルド・ホッグス」の面々が自分たちの「聖域」であるバーに入ったことに憤り騒動を引き起こすという、アルカイダとかタリバンの類の性質を持ってるんですね。



んで、こいつらのどこらへんが「バカ」なのかというと

行動原理が全て感情論である

ということにつきるのです。なんてったってトラボルタが仲間をだまして旅に出た理由が「ウサを晴らしたい」というだけでしてデル・フエゴスと揉めるきっかけも「ムカつく」ということでしょうもないことをしかけたからなんですな。お前はその年でどんだけキレやすいんだ、と。大量破壊兵器がきっとある、という理由でイラクに戦争しかけたブッシュ並のアホさです。

んで、デル・フエゴス(リーダーは名優レイ・リオッタ、全然スペイン系じゃないです)なんてのは「お前ら(ワイルド・ホッグス)みたいな都会に住んでるバイカーのパチモンが俺らの縄張りをうろちょろすのは迷惑なんだよ!」と喧嘩をふっかけてワイルドホッグスのバイクを奪おうとするんですね。もう「でっかい仏像なんてもんは偶像崇拝を禁止してる俺たちには迷惑なんだよ!!」とばかりに他人が作ったバーミヤン遺跡を勝手に爆破して喜んでるタリバンそのものですわ。「迷惑」云々は手前の勝手な都合ですから。要するに「ムカつく」ってだけ。


そんないい年して低レベルなオッサン達がハーレーダビッドソンの名の下に「空よりも広く、海よりも深い」アホらしさを銀幕いっぱいにさらけ出して楽しましてくれるんですが、結局これは大人が楽しむ映画ですんでジャンプ漫画みたいな「友情、努力、勝利」みたいな無理矢理感動させる方向には決して進みません。徹頭徹尾アホ、バカ丸出し。エンドロールが始まってからやっと落とし前をつけるという「途中で感動させて、それまでのバカ展開をウヤムヤにする」といった安直かつ無責任な展開はないんですね。


そういう「大人の倫理観」によって作られた、ちょっと社会風刺も入った、まぁそれこそ団塊世代向けの楽しい映画に仕上がってます。そうそう、書き忘れてたけどこの映画のヒロインのマリサ・トメイのカウガール・ルックが最高にかわいらしくて(いい年の女性なのにね)これを見るだけで男なら一見の価値ありです。(そして、トラボルタじゃなくてウイリアム・H・メイシーと絡むところがいい)