コーマニズム宣言

というわけで「ヘルライド」だぜ。

タランティーノがプロデュースしたこの映画、60年代に作られたB級バイカームービー(ロジャー・コーマンがよく作ってた)へのオマージュ・・・・っていうかそのもので

コーマン(注;映画監督の名前です)丸出し!!!

って感じでだぜ、hell yeah!!(←馬鹿)


で、話は変わって21世紀に入ってからというもの、911以降のアフガン・イラク戦争アメリカは叩かれた。
アメリカ人はこんなにアホでバカなんですよ〜」みたいな発言は歓迎され彼らの無知蒙昧さは世界を滅ぼすと言われ叩かれた。「世界を知っている国際感覚豊かなインテリゲンチャなセンセェたち」によって。

んで、どういうわけかやり玉に挙げられるのが貧しい暮らしでとてもじゃないが国政に携わる権限がありそうもないホワイト・トラッシュと呼ばれるような人たちだ。それくらいだったらまだいいが英語を使わないというだけケイジャンとかアーミッシュなんてな人たちまでが「無知蒙昧」の烙印を押され中東でのアメリカの罪を背負わされるようになっていった。


話変わってWW2が終わった直後のアメリカでは退役軍人で復員後の再就職のあてがなくなった連中が暴走族になって大暴れして「ホリスター事件(ググってくれ)」なんてな騒動を起こしてセンセーションを巻き起こすことになる。この事件を元にして作られたのがこの映画

そもそもこのホリスター事件ってのがイギリス製のバイク(値段が安くて軽量だったのでスピードが出た)に乗るグループと愛国的でアメリカ製のバイクに乗るグループによる対立ってわけなんだが、その根底にある愛国者側のメンタリティってのが結局

アングロサクソン人に生まれてこなかったとか英語が達者でなかったために差別や偏見や貧困にあえぎ戦争に参加せざるをえなかったアメリカ貧乏白人の「英国文化」に対する憎しみだったのである。

そんな感じでバイクの世界というのは英国 VS 英国以外 の対立軸がより鮮明に出ていると思っていただきたい。

んで、話をヘルライドに戻してみるとキャストがフランス=イタリア系のタランティーノ組のマイケル・マドセンデンマーク系)がイイモン。イギリス上流階級出身のガイ・リッチー組のヴィニー・ジョーンズ(イギリス人;リッチでヨーロピアンカスタムが施されたハーレーに乗ってる)がワルモン、という非常にわかりやすい構図がとられてるね。

ほいで台詞(何故かラップみたいにやたら韻を踏んでたりする)には「danke shoen」とか「no probleme」とか英語以外の言語が多数出てくるし、最近なくなった御大デビッド・キャラダイン(キャラディンが正しい発音らいし)が昔やった殺しについて尋問されるシーンで吐く台詞

「よせよプルースト(Proust:「失われた時を求めて」の作者)なんてガラじゃないぜ、それに証拠(proof)だってないじゃないか」

なんて理解できる人間は日本には少ないだろうな。英語教師やっててイギリス人の通訳もやったことがある僕の親父なんぞは「プルーストって誰?」とか言ってたもんな。

こんな感じで英国と英語圏以外のボキャブラリーや知識がバンバン出てくるこの映画、あくまで「無学無教養で無知蒙昧とされるバカアメリカ人」たちのために作られてるということをよ〜く考えて欲しい。

そう、日本の「国際社会に精通したインテリゲンチャなセンセェたち」が言う「無知蒙昧な馬鹿アメリカ人」たちは無知蒙昧ではなかったのである。

センセェたちは例えばランボーボードレールの詩をどれだけ理解したとしてもワイルドやワーズワースを理解していなければ「教養が無い」とみなし、サルトルトーマス・マンを読んでいてもフィッツジェラルドを読んでいなければ「馬鹿」の烙印を押しているといった具合に

英語圏の文化以外は文化と認めていないだけだったのだ

まぁ、こんな連中がアフガン・イラク戦争をダシにまったく関係の無い自分らの主張を押し付けて結果としてブッシュ政権(センセェ方にとってブッシュ元大統領の気に入らない点はスペイン語が達者なことくらいだろう)をヨイショしてたことを考えるとセンセェたちの罪は相当重い。


そういう「他者への配慮」とか言いながら自分らが一番排他的なエセ文化人、エセリベラル、エセインテリゲンチャな連中にとどめを刺す見事な快作に仕上がってるぜhell yeah!!(←馬鹿)

ついでに書いとくと外人(と高島忠夫)がよく言う「YEAH!!」ってのは本当は北欧の人(バイカーの多くは北欧系)が使う言葉だぜ、英語じゃねーぜhell yeah!!




ただ・・・・、この映画非常に致命的な問題があるんだよ。(つづく)