勝田ズ・ウェイ  9

わぁ!昨日書こうと思ってたら寝過ごしてしまった!

そういうわけで一日お休みしましたが続き書きます。脳内フィルム・ノワール大作(?)「勝田ズ・ウェイ」はいよいよ興戸社長の地獄の説教第3部のとこですね。
毎度毎度しつこいですがこのお話はフィクションであり、実在の個人・団体・事件等とは一切関係ございませんし、クルド人に関する記述も実際のクルド人の人たちとは無関係です。また差別的・暴力的な表現については劇中の登場人物が保身のために言った詭弁(「詭弁」とは「口からでまかせ」のことだ)に過ぎませんので当方の主張ではありまん。よって当方ではこれらの表現に対して一切の責任を負いかねますことをご了承願います。


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さて、説教大魔王の興戸社長から悪夢の説教をかまされて自我の崩壊まで追い込まれた勝田くん。自分はこれから一体どうすればいいかわからない状態になってしまって呆然自失の状態だ。そこで社長の説教第3幕が始まった。

なお、くどいようだがもう一度だけ現在の状況を確認しておこう、道徳を重んじ、教育問題にも熱心な興戸社長の息子の公一とその友人たちは勝田くんの彼女とその友達を拉致してリンチの上一人を殺害、かろうじて生きている勝田くんの彼女エヴィンちゃんを証拠隠滅のため勝田くんに殺せと命じているのだ。

「本当に今の世の中はおかしくなったものだ」と社長は話始めた。「景気はどんどん悪くなって世界情勢も悪化の一方。清く・正しく生きることを美徳としてたかつての日本の姿は本当に消えかかっている。この子たち(息子・公一とその友人)がこんなこと(リンチ殺人)をするのも無理は無い。低俗な人間が我々と同様の権利を持って街を歩いている。そして金儲けになるからとそいつら向けにハリウッド映画だのハンバーガーショップだのができてどんどん社会自体が低俗になっていってる。こんな世の中で生きることは純粋な彼ら(息子・公一と友人たちな)にとってどんなにか不安なことだろうか?幸いにしてこの街は健全だ、本当の日本が残っている。私とこの子たちは命がけでこの街を守る。いや、日本を守る。戦前の日本人は凛々しかった。何故か?それは道徳を知り、礼を重んじ、助け合うことが美徳だったからだ。勝田、お前は日本人だろう?ハンバーガー食って育った低俗な連中や外国人たちとは違うんだ。本当の日本人は道徳を知り、礼を重んじ、助け合うことを美徳とする。このコのように自分ばかり助かろうとする俗物とは違うんだ。どうか目を覚まして一緒に日本を守るために戦ってくれ」

ここで一応ツッコんでおくとこの興戸社長の祖父は戦前はゆすり・たかり専門のチンピラであり、終戦直後の農地改革で頭の悪い田舎のお百姓さんが自分の土地を手に入れたのに目をつけてゆする・たかる・だますの三拍子で土地を奪い巨万の富を得た男である。この事実を鑑みて上の発言を見ると思わず吹き出してしまいたくなるものがある。そもそも「日本を守るために戦う」ために勝田くんにやらせようとしてることは彼女を自分たちの保身のために殺害せよと言っているのだ。

しかし、こんなでたらめな言説は普段の勝田くんだったら「あちゃー、また始まった」と思って右から左に流すような代物だが今の自我の崩壊まで追い込まれた勝田くんには暗闇に現れた一筋の救いの光のように感じてしまうのだ。そしてうつろに空を見つめる勝田くんはゆっくりと首を縦に振った。「もうだめだ、自分は本当に無価値な人間で、自分にはこの状況を変えられる力も無い、この人(興戸社長)の言うことに従うしか生きていく道はないんだ、自分なりに今まで精一杯やった、でもこれは変えられない運命なんだ」という諦めの念が勝田くんの頭の中にうずまいた。

「そうか!やってくれるか!」と興戸社長が叫ぶのを聞き、ととうとう自分の運命が最悪の方向に決まったことがわかったエヴィンちゃんの心中は私fabriceの文章力では書き表せないものがあるが、大雑把ながら「生きながらにして地獄に堕ちたような気分」であったとだけ書いておく。

さて、この興戸社長の3部構成の説教は非常に長時間に渡ったので奇しくもはてな界隈で評判の良い映画「ダークナイト」の上映時間と同じ2時間32分にも及んだ。これを一人の青年の人格を破壊するのに必要な時間として長いととるか短いととるかは読む人の判断に任せる。

さて、これから書く内容を皆様どうかよくご覧いただきたい。道徳を重んじ教育熱心で「清く・正しく」を人に説く男が「言葉の力」で何ら落ち度の無い哀れな女の子を辱め、「大淫婦」にまで堕落させ「言葉の力」でその女の子と10年以上も連れ添った恋人との関係を大淫婦のペテンに変え、恋人に彼女を裏切らせ「言葉の力」で今から彼女はありもしない罪状でその恋人によって死の制裁を受けなければならなくなった、というところなのだ。


というわけで、ふらついた足取りで椅子から立ち上がり空を見つめながらエヴィンちゃんの元に歩いていく勝田くん。そんな勝田くんに対して両サイドから「勝田、勝田、勝田」とか「がんばれ〜〜!!」とか、まるで今から甲子園に出場してバッターボックスにでも立つかのような(きっと世界一ありがたくない)声援をバカ息子・公一とその友人3人は送るのだった。

勝田くんは「許して・・・・許して・・・・」とうわごとのようにつぶやきながら、エヴィンちゃんの元にたどり着き、恐怖で目をつむって泣いているエヴィンちゃんの首に両手を回した。いつもと同じぬくもりと感触が勝田くんの手のひらに広がった。エヴィンちゃんは「やめて・・・・・・」と小さくつぶやいたのが最後の言葉となり、長時間暴行された挙句さらに恋人の前で辱めを受け、その恋人に裏切られ殺されるというこれ以上は私fabriceの頭では思いつかないくらい最悪な人生の最後をむかえたのだった。

ヴィンちゃんが死亡してぐったりとなった時、勝田くんは手の力を緩めた。まるで手の平で掬った砂がこぼれるような感じでエヴィンちゃんの死体は勝田くんの手からこぼれて床に崩れ落ちた。

「よくやった〜〜〜!!!!」と放心状態の勝田くんを興戸社長は抱きしめる、そして「勝田ありがとう!よくやってくれた!」とそれに重なるように残りの4人も抱き合った。まるで甲子園で優勝でもしたかのような騒ぎようだ。

さて、本当の優勝騒ぎだったらこの後勝田くんは胴上げされるんだろうけどそうはならない。あまりのショックに勝田くんは失神してしまったからだ。



つづく