勝田ズ・ウェイ  11

はい、一日休んでしまいました。すいません。それにしても上の動画の映画「ザ・タウン」まぁまぁ面白かった(クサかったけど)のですが最後がマジでクソでした、ハイ。最後にアイルランド系の主人公が離ればなれになった恋人に「俺だっていつか変われるんだ」と送ったプレゼントが何とオレンジだったんですよ。オレンジはプロテスタントのシンボルカラーですね。アイルランド系はカトリックでシンボルカラーはグリーン・・・・・。

聖公会プロパガンダ

という映画でした。というわけで私は3月のセント・パトリックス・デイを全力で応援いたします。よろしくです。

さて、「勝田ズ・ウェイ」始めます。このお話はフィクションであり実在の個人・団体・事件等とは一切関係ございません。

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このお話の主軸となる若い女性2人のリンチ殺人だが、常識的に考えて現在の警察の捜査力ではあっという間に犯人が割れてしまう。このお話自体リアリティを追求してないが一応なかなか犯人が割れない理由を書いておく。

この事件の担当主任捜査官というのが「新宿亀」とあだ名のついた男である。言わずと知れた某有名小説からつけられたあだ名だ。亀は亀山という名前だからなのだがこの男は東京某所に勤務していたが別に新宿署に勤務していたわけではない。かつては実に敏腕な殺人課捜査官であり、養豚場経営者による暴力団組員の殺害事件ではこの犯人の経営する養豚場で飼っている豚の糞から真珠が出てきたことから立件した。(これを「豚から真珠」事件と言う)ところがそんな敏腕刑事にある出来事が起こった。
とある内装工事を請け負っている小さな会社の社長が殺害された。新宿亀はここの従業員が怪しいと思い捜査を進め従業員の1人を「賃上げ要求に応じなかった腹いせ」という動機で逮捕、アリバイが全くなかったこの従業員は裁判で懲役10年を言い渡された。めでたしめでたしである。
ところがだ、この事件、本当はここの社長の奥さんが起こした保険金目当ての自作自演の事件だったのだ。この奥さんはタイから嫁いで来た人なのだが、故郷から安い報酬でどんな汚い仕事もやる殺し屋を雇って殺させたのである。もちろん証拠は残さず腕は一流だ。
しかし事件から数年後、この殺し屋は現地タイで逮捕されてしまった。そして自分が関わった36件の契約殺人を洗いざらい自供した。当然内装工事会社の社長殺害も。この男、普段はタイとカンボジアの国境付近のヘンピな村で貧乏子沢山にあえぐただのお百姓さんである。そして、この男を逮捕した警察官というのがまたど田舎警察の平巡査だったのである。この巡査の風貌はこんな感じ
「まるで3日くらい徹マンしたような眠たそうな目つき、ボウボウに生えた無精ヒゲ、鼻は赤く、左の頬にでっかいホクロがありそこから長い縮れ毛が伸びていて頭はてっぺんが薄く猫背でがに股・・・・・」
そう、日本人なら誰でもわかると思うが志村けんの「へんなおじさん」そっくりなのである。しかもこの巡査、勤務先がど田舎なので泥の中を行ったり来たりすることが多く勤務時間の大半を裸足で過ごすようなみすぼらしい有様の警官なのだ。
「そんなど田舎の警官に負けてどないすんねんな?」というわけで国際レベルで日本の警察の赤っ恥を晒したこの男を警視庁は厄介者扱いしてあっちこっちの警察署をたらい回しにされる憂き目に遭った。この憂き目にあってる状態と、ど田舎の警察官に負けたという汚名から彼は「新宿亀」と呼ばれるようになったのである。
そして、その新宿亀も今年で58歳。もうすぐ定年を迎え、定年後は警察官僚OBが役員を勤めるIT関係の会社(アクセス解析が主な仕事)に天下りが内定している状態なのでもうこれ以上誤認逮捕はご免とばかりにあつものに懲りてなますを吹くような態度で事件にのぞんでいるのが現在の状態なのだ。そして、今回のリンチ殺人事件についての彼の分析はこうだ「クルド人居住区の近くでのリンチ殺人。これはきっとクルド人を嫌う連中のみせしめ的な意味があるに違いない。ということは犯人は彼らと仲が悪いマレーシアの連中で間違いない。あいつら最近は中国系の連中とつるんででかい顔してるからなぁ」と、どうでもいいような情報を元に的外れな推理を展開して捜査をあさっての方向に持って行っている新宿亀なのだった。


さて、それはいいとして勝田くんの現在の精神状態について書いておこう。彼は彼女のエヴィンちゃんの殺害を強要されて実行して以来、自分の体が自分のものでないような感覚に教われていた。そして、罪の意識から逃れるためにエヴィンちゃんとの楽しい記憶を一切捨て去ってしまおうと一種の記憶喪失状態に陥っていた。そしてその失くした記憶の空白に現在入り込んでいってるのが前回登場した「大いなる幻想」なのだ。
「俺は悪い女(エヴィンちゃん)に騙されて偽りの人生を歩まされてきた。もう少しで騙されて人生を捨て去ってしまうところだったが興戸社長や友人である息子の公一たちのおかげで助かった。これからは良き日本人として日本のために努力しなければ」という言葉で書くと聞こえはいいがやっていることはリンチ殺人の手助けを強要されただけのことなのである。
何度も書くがそれがどんなに間違いだとわかっていても一度それに従って行動してしまったらそれが真理と信じてしまうのが人間の心の弱さなのである。
しかし、しかしだ、いくらそれを信じたところで自分が自分で無いような感覚からは逃れようがなく、おかげで体調は崩れ勝田くんは日に日に痩せていった。そして目の下にはクマができ、髪には白髪がたくさんできて10歳は老けて見えた(つっても若いから30歳くらい)こういう精神状態の人間は大概髪を切りたがらない。自分の体が刃物で切られる感覚がたまらなくつらいからだ。そして、内勤に回されて退屈だが現場作業のような危険は無い仕事をしてるとはいえ、自分の体が自分の体でないような勝田くんにとっては満足にこなせるわけがなく、すっころんでデスクの角に顔を思いっきりぶつけた。ちょうど左目のあたりだったので失明こそしてないがしばらく目が見えなくなり、左目にアイパッチをすることとなった。、ついでにその時どこかで頬を切ったらしく2針縫う傷を負いヒゲを剃ることができなくなったので無精髭がボウボウ生えている状態である。

というわけで現在の勝田くんはちょうどこんなかっこうである。

ヴィンちゃんに止められていたタバコも彼女が死んだ今、止める意味が無くなって再び吸い出した。そして以前勝田くん物腰が柔らかく優しい感じの青年と書いたがそれはエヴィンちゃんと連れ添っている時間が長かったからである。エヴィンちゃんの不在は勝田くんをふてくされたやさぐれ男に変えていった。一番顕著なのはそこら中にツバを吐くくせだ。会社に出社する時に会社の正門の守衛室の前で思いっきり、そして何の悪気も無くツバを吐いたので守衛さんが勝田くんを注意した。すると勝田くんは「中国のハルピンでは(空気が悪いから)街中でみんなツバを吐いてる。中国で一番キレイなねーちゃんはハルピンのねーちゃんだ。中国15億の人口の中でトップクラスの美女の方々がツバを吐いてる。ツバを吐くのは何らはしたないことはない。それとも中国で一番の美女たちがはしたないとでも言うのか?」と自分が一度も行ったことの無いハルピンの話をだしてくだを巻き、おそらく興戸社長の得意技の説教に触発されたと思われるでたらめな論説を誰彼かまわずしだす有様であった。

そんな勝田くんの有様を見た現在、勝田くんの同僚である井口は社長にその様子を報告。勝田くん以外の「大いなる幻想」のメンバーたちはどうしたものかと話合い、公一がある提案をした。

つづく