台湾ヤマハ&わかばマン 「朝鮮ヤクザ・ライジング」

うう、忙しくて書くのがしんどい。でも年末のレコード大賞までにはこのお話終了したいのでお話はがんばって書きます。最初に書いたけど、このお話「ドギツイ、ガラ悪い、差別的表現多数」という商業目的の出版物では決して表現できないものを表現するだけの目的で作ってますので今回あたりからそっちの方向にガンガン行きます。

このお話はフィクションであり、あらゆる個人・団体・事件等とは一切関わりございません。

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その歌手の名は「若葉一郎」、最近レコード・デビューしたばかりで山陰地方中心に巡業しているらしい。彼の芸風の特徴は「カントリー&ウェスタンと演歌の出会い」であり、ステージ衣装もカウボーイハットにウエスタン・シャツにジーンズにカウボーイブーツである。
早い話が地方でドサ回りやってるイロモノ演歌歌手なのだが、台湾はこの男を求めて公演会場に向かった。
夜の9時をまわりショーは終わり「若葉一郎」なる歌手は楽屋にいたのだが、そこに台湾は無理やり入り込んで楽屋のドアを景気良く開けて一番こう言った。

「元気にしとったか!朝鮮ヤクザ!!」

その声を聞いてびっくりして振り向いた若葉一郎も「た、台湾!!なんでここが!?」と言い終わると同時に「ちょっと来んかい!」と台湾は若葉の手を引っ張って外に連れ出した。

この若葉一郎なる男、本名は「ソン・ドンジョン( 宋 銅宗 と書く)」といい、台湾の小中高までの同級生で高校時代はフォーク・デュオなんかを組んで台湾がギター、ソンがヴォーカルで路上ライブなんかをやっていた。

この男のあだ名が中学時代から「わかばマン」だったので芸名もそこから取られている。このあだ名、この男が学校でタバコを吸って火の不始末からボヤを出し、その時吸ったタバコが悲しいかな安っすい「わかば」だったのだ。後ろの「マン」はアメリカ英語の「マルボロマン」つまり典型的なカウボーイから来てる。「マルボロ」というタバコは新発売された当初女性向けの販売戦略を行ってたが売上が伸びずマッチョな男性客にターゲットを変更、映画の中でマーロン・ブランドに吸わしてみたりカウボーイの出てくるCMを作ったりしてイメージを作っていった。これがマルボロマンの名前の由来だ。これをわかば吸ってボヤ出した情けないイメージとくっつけて「わかばマン」としたわけだ。

んで、このわかばマンの容姿だが一言で言うとハリウッド俳優のエイドリアン・ブロディそっくり、身長も186cmとほぼ同じ。特に鍛えたわけではないが筋肉が全身にみっちり付いてて長身でもひょろっとはしていない。


さて、楽屋からわかばを引っ張り出した台湾は無一文なので劇場の近くのラーメン屋で晩飯をおごらせ、現在の演歌歌手に至る経緯を聞いた。というのもわかばは4ヶ月前に失踪したことになっていたからだ。高校卒業後は疎遠になっていた2人なので失踪の話を(バイトしてた中国地方の工場の寮で)聞いた時も台湾は「アイツ朝鮮人やから徴兵されて韓国のどっかでテコンVと一緒にポーズ決めてる(韓国軍の勧誘CM)んちゃう?」と投げやりだった。ただ、風の噂で「ヤクザになった」と聞いただけだった。

んで、わかばが語った失踪の経緯はこんな感じ、高校卒業後、信販会社に勤務していたわかばだったがミュージシャンへの夢があきらめきれずいろんなオーディションを受けていたある日、プロでビューの話が来た。うかれて契約書にサインしたわかばだったがデビューの内容は全く本人の希望とは違い聞いて無いことの連続だった。なぜかイロモノ演歌歌手として大阪を遠く離れた山陰地方でデビューすることが無理やり決まったのだ。家族や友人にも別れを告げられず、挙句にヤクザの盃まで交わされて抜けることのできない苦難の日々を送っているのだという。

ここまで書けば大体察しがつくと思うがわかばを無理やり引き入れたヤクザとは石切連合だったのだ。わかばと石切連合の因縁だが、台湾が助けた幼なじみのみすずちゃんの彼氏というのがこのわかばなのである。台湾とみすずちゃんが石切連合とモメたことで連合はやはり何らかの報復を企んでいた。わかばとみすずちゃんが交際していることはみすずちゃんがあまりにも評判の悪いヘンコなコだったのでわかばが恥ずかしがって周囲に黙っているよう指示、ほとんどの周囲の人はこの事実を知らなかったので石切連合もなかなか報復の対象を見つけられなかったがとうとう尻尾をつかまれたというわけだ。

「あちゃ〜、俺がヘマしたばっかりにこいつはこんなとこでこんな目に。この調子やとみすずちゃんもどないなってるか心配やけど、とりあえずこいつをどうにかする方が先やなぁ」

と考えた台湾はわかばが契約してる事務所に連れていけ、と無理やり事務所がある商店街にわかばを連れて赴くことになった。


つづく